2013.05/19 [Sun]
山田彩人『少女は黄昏に住む マコトとコトノの事件簿』
![]() | 少女は黄昏に住む (マコトとコトノの事件簿) 山田 彩人 東京創元社 2013-03-09 売り上げランキング : 589024 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
脅したとは人聞き悪いね……。
きみの女装姿をネットで公開する計画を話したら、きみがこころよく招待してくれたんじゃないか
俺の名は姫山誠、あまりの童顔ゆえ高校生に間違えられるが、れっきとした二十五歳の日本男児・刑事である。侠気あふれる高倉健さんの映画を愛し、市民の生活を守るため日々奔走している。いままで数々の難事件を解決し、署内で『名探偵マコちゃん』と呼ばれている俺なのだが、そこには大きな秘密があって……。家は事件の謎を解いているのは別人だなどとは、決して人には言えぬ。おまけにその陰の名探偵・琴乃は引きこもりのオタク女だなんて!
スイーツ大好き童顔刑事の主人公が、性悪女子高生に良いように弄り倒される連作ミステリ集。デビュー作の『眼鏡屋は消えた』が個人的にイマイチだったので、続く第2作は避けていたのですけれど、今回はまったく新規の短編ミステリということで再トライしてみました。
収録作はトリック主体のハウダニットと、ロジックに力を入れたフーダニットの二点を中心に構成されており、中でも第四話「吹雪のバスの夜に」が突出しています。予期せぬ大雪から運行が困難となって立ち寄った土産物屋で、偶然めぐり合わせた複数のバスの乗客たち、という特殊状況を存分に活用して殺人事件の犯人を絞り込む手際は、実にスマートでした。
ただ、変人な探偵役と語り部のやりとりで引っ張っていくタイプの、いかにもいま風の作品にも関わらず、ライトなタッチに反して兎にも角にも読難い。コトノの芝居掛かった喋り方と、マコトの古風なキャラ付けによる地の文が絶望的なまでに堅苦しく、リーダビリティをことごとく削いできます。特に、作者のお気に入りなのか乱発される「~できぬ」の“ぬ”は、出てくる度に文章のリズムを止めてしまうため、それだけで気分が萎える始末。
表紙の印象、ページ数から受ける軽さ以上に、読み切るのに手間取りました。これで、もう少し取っ付きやすくなってくれればなぁ。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form