2013.05/04 [Sat]
碇卯人『杉下右京の密室』
![]() | 杉下右京の密室 碇 卯人 朝日新聞出版 2013-03-07 売り上げランキング : 86698 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
ここに集めたのは、おれを裏切った可能性のある容疑者ばかり。
誰が本当の裏切り者だかを推理してみようというのが今回の趣向だ。
見事当てることができるかな、杉下君?
杉下右京のもとに届けられた1通の封筒。それは、大学時代のチェス部の好敵手で、卒業後はベンチャービジネスで巨万の富を得た、高松からの手紙だった。そこには、週末に10名ほどの友人を孤島にある高松邸に招き、「推理ゲーム」を行うので、参加して謎を解いてみろと書かれていた。休暇を取ってゲームに参加し、見事に謎を解いた右京だったが、高松の姿が見えないことに気づく。やがて、何者かに殺された高松が発見されるが、現場となった部屋は完全な密室だった。携帯電話も繋がらない孤島で右京は一人、難事件に挑む。
ドラマ『相棒』オリジナルノベライズ 第3作。
碇卯人こと、ミステリ作家の鳥飼否宇による杉下右京を探偵役にした連作中編です。『杉下右京の密室』のタイトルからわかるように、収録されている2本はどちらも密室をテーマにしていることもあって、シリーズ中では最も本格色の濃い内容でした。
1本目の「大富豪の挑戦状」は、大学時代の友人に招待された右京さんが孤島に建てられた新居を訪れ、惨劇に巻き込まれるお話です。孤島に密室、館モノ、集められた曰くありげな人々といった王道のガジェットに、果ては屋敷の詳細な見取り図まで付いており、トリックの“らしさ”共々、本格心をくすぐられる作品となっています。
そんな非日常な舞台で展開される前半とは打って変わって、2篇目の「壁」はドラマの通常回に比較的近いテイスト。右京さんがどこか離れた場所に赴く形式がスタンダードだった本シリーズでは異色な内容で、米沢さんや伊丹、月本幸子など、同馴染みのレギュラーキャラクターも数多く顔を見せています。
とはいえ、ファンとしては月本幸子がドラマとは異なり、「右京さん」呼びしているシーンに引っ掛かりを覚えました。一応、「杉下さん」と呼び掛けているパターンもあるので、ちょっとしたミスだと思うのですが、ノベライズを読む際にオリジナルと齟齬をきたす描写が出てくると、それだけで冷めてしまう読者もいると思うので、そのあたりはもう少し配慮してほしかったです。どうにも細かいことが気になってしまうのが、ぼくの悪い癖。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form