2013.04/13 [Sat]
周木律『眼球堂の殺人 ~The Book~』
![]() | 眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス) 周木 律 講談社 2013-04-04 売り上げランキング : 48565 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
……ザ・ブックというのは、この世に存在する無数の定理について、そのすべてが書かれた本だ。
記載されている証明は無限に及び、したがってページも無限に及ぶ
天才建築家・驫木煬が山奥に建てた巨大な私邸“眼球堂”。そこに招待された、各界で才能を発揮している著名人たちと、放浪の数学者・十和田只人。彼を追い、眼球堂へと赴いたライター陸奥藍子を待っていたのは、奇妙な建物、不穏な夕食会、狂気に取りつかれた驫木……そして奇想天外な状況での変死体。この世界のすべての定理が描かれた神の書『The Book』を探し求める十和田は、一連の事件の「真実」を「証明」できるのか?
第47回メフィスト賞受賞作。
おまっとさんでした! メフィスト賞受賞作3ヶ月連続刊行の1冊目は周木律『眼球堂の殺人』。狂気の建築家が設計した山奥の奇妙な館。集められた天才たち。閉鎖状況で巻き起こる連続殺人。これぞ本格、新本格といった踊り文句に、ミステリ読みとしては否が応にも反応してしまいます。
しかも、今回からはメフィストの編集長が『恋都の狐さん』という謎チョイスをかましてくれたマダムから元文三のLへと交代したこともあって、期待度さらに二倍増し。最近はメフィスト賞らしさがなくなってきている、との座談会での発言も心強く、メフィスト賞の今後の方向性を占う意味も含め、とにかく楽しみにしていた作品なのです。
あらすじからもわかるように、本作は王道直球の新本格路線。読んでいて作者の好きだったミステリ小説、作者の書きたいミステリ小説というものがひしひしと伝わってきます。しかしながら、それがあまりにもスタンダードでオーソドックスなのが悩みどころでしょう。
舞台設定にストーリー展開、キャラクター配置、ガジェットの活用、事件の真相や落としどころまで、あまりにもありきたりで独自性がない。いつかどこかで見た話以上のものがないのです。
21世紀も10年以上過ぎた2013年の世の中に、敢えてこの“古臭い”ともいえる新本格を新人のデビュー作として出す意味、メフィスト賞を与える必然性が果たしてあったのかが甚だ疑問です。メフィスト賞は自らムーブメントを作っていくような小説を送り出す賞じゃないの? ミステリはいつまでも過去に縋って、留まっているような状態で良いの?と強く感じさせられました。
作品の出来は決して悪くありません。面白いか、つまらないかでいえば確かに楽しめたし、図表の処理の仕方など一部に反則とまでは言わないまでも腑に落ちない箇所があるにしろ(個人的には、下手に隠し立てしない方が真相を明かされた際の衝撃は大きくなったと思います)、及第点は取れています。
けれど、これがメフィスト賞に相応しい作品かというと、私は否と答えたい。多作の著者さんのようなので、とりあえずは夏発売の次巻を待つことにします。
座談会で俎上に載せられていた煙突館(?)の話は是非とも出してくれないかなー。
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はじめまして。