2013.04/05 [Fri]
霧舎巧『一月は合格祈願×恋愛成就=日常の謎 私立霧舎学園ミステリ白書』
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★★★☆☆
もちろん、そうだよ。
ただね、もともと犯罪者の資質があったから探偵になれなかったのか、
探偵になれなかったから犯罪者に成り下がったのか、判断に苦しむところなんだ。
一月。正月早々、神社で強盗事件発生。それは犯人、被害者、凶器、証拠品が消失する前代未聞なものだった。以来、街では次々と不可解な出来事が!消える釣銭、一晩で玩具になる宝石、事件を完璧に予言する年賀状…七つの謎に霧舎学園の琴葉たちが翻弄される!
「私立霧舎学園ミステリ白書」第10作。
兼ねてからアナウンスされていたとおり、一月のテーマは日常の謎。一件の強盗事件を主題とし、その手掛かりを追う過程で遭遇する不可思議な出来事を七つの日常の謎として数珠繋ぎに解いていく、ちょっと変わった形式の長編ミステリです。
前作刊行からおよそ3年近く。シリーズ開始から10年掛けて、ようやく最終章の三学期編に突入です。相も変わらず、寡作というより遅筆というか。今回の作品もメフィストに先行掲載されてから延びに延びての発売ということで、今さら言ってどうにかなる問題でもありませんが、もう少し刊行ペースが上がらないものかと。
霧舎作品はいつも詰め込みすぎて消化不良に陥ってしまうパターンが多いのですけれど、本作もまたその類に漏れず、薄い分量の1冊の中にこれでもかというほどに謎と解決が盛り込まれているため、非常に複雑で目まぐるしい。実際には、それぞれひとつの謎を解いてから次の謎へ取り掛かるため、構造としてはそれほど難しくはないハズのです。
しかしながら、各章の最後で問題が提示され、次の一章を丸々使って謎解きを行い、また問題が出され、と何度も繰り返されてゆくところが、果てしなく呑み込み難い。素直に一章毎に一個の事件を解決していった方が遥かにスマートでしょう。
各々のネタは決して悪くないのに、見せ方が巧くないので勿体なく感じます。これが「《あかずの扉》研究会」くらい分量があればまた変わってくるのですが、何ぶん「霧舎学園」は“遊び”の部分が少なくてギチギチすぎるのです。
ラブコメ要素に関しては前巻に引き続いて、今回も保っちゃんとのの子先輩の独壇場。このあたりも、全体のページ数さえ増やせば、琴葉や棚彦まで描き込めると思うんだけどな……。
マンガでミステリに興味を持った初心者向けの本格入門という初期コンセプトが、どうにも作品に対してマイナスにしか働いていないように感じました。
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