2013.03/26 [Tue]
福田和代『碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート』
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★★★☆☆
音大卒業後、航空自衛隊の音楽隊に入隊した鳴瀬佳音は、定期演奏会などの任務に向けて練習に励んでいる。自衛隊という未知の世界に戸惑いつつも鍛えられていく。ある日、「ふれあいコンサート」で使う楽譜を用意したところ、佳音が担当するアルトサックスのパートの楽譜が楽譜庫から紛失していた。いったい、どこに消えたのか? ちょっとドジな佳音が呼び込む不思議な“事件”を、仲間たちとともに解決する!
航空自衛隊の音楽隊に所属する主人公が様々なトラブルに遭遇する日常の謎ミステリ風小説。初野晴の「ハルチカ」シリーズや中山七里「岬洋介」シリーズ、古野まほろ「天帝」シリーズなど、いま流行の音楽ミステリの系譜に連なる作品ではあるのですが、それらと比べるとミステリ成分は格段に低く、どちらかといえばお仕事小説や青春小説の類に近いです。
というのも、本作ではミステリにおける謎解きのカタルシスがまったくもって存在しません。あるときは楽譜の紛失、あるときはかつて行方不明の友人から届いた絵ハガキだったりと、主人公の佳音がちょっとした問題に巻き込まれ、それを軸にお話が展開されていく。こう書くといかにもミステリちっくなのですけれど、別段そこに論理やトリックがあるわけでもなく、あくまでもヒーリングストーリーを描くための話題のひとつでしかないのです。
本作を読んで私がいちばん最初に思い出したのが、戦争によって荒廃してしまった世界を舞台にラッパ吹きの歩哨の女の子の日常を綴った『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』という深夜アニメで、人と人の間にある想い、和やかな日々、キャラクター同士の活き活きとしたやりとりといったハートウォーミングな雰囲気を堪能できる作品になっています。
しかし、いわゆる日常の謎方面を期待するのなら、第二章「ある愛のうた」がギリギリミステリしているかな?程度。全体として、この内容で“ミステリ”と謳うのは、提供する側にとってもされる側にとってもミスマッチを生む可能性があり、決してプラスにはならないと思う。
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