2013.03/23 [Sat]
法月綸太郎『犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題』
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★★★☆☆
売れっ子ライター・虻原がマンションから転落死した。そのマンションには、虻原もかつて所属していた劇団の主宰者が住んでいた。最近、その劇団の芝居を巡り、二人には感情のもつれがあったらしいのだが…。虻原は、寄稿した雑誌の最終回のコラムに不可解な俳句を二首、残していた。さらに「六人の女王にたずねるがいい」という謎のメッセージが。はたして、俳句に隠された謎とは? 星座にまつわる六つの謎を解き明かす。
「法月綸太郎」シリーズ 第11作。
本年度のランキング対策の一環として『犯罪ホロスコープⅡ』を押さえておきたいので、まずはその前半戦たる『犯罪ホロスコープⅠ』から。
第1巻では、黄道十二星座とギリシャ神話をモチーフにした短編が6本収録されており、それぞれの章の冒頭にて題材となった星座にまつわる物語を記し、そこから本題の事件に入る形式は各話共通です。どの短編においても事件の構図と神話のストーリーがオーバラップされる一種のテンプレートに嵌まりながらも、その内容は擬似ダイイング・メッセージ、暗号解読、双子、昏睡状態で入院中の友人から届いたメールなど、非常にバラエティに富んでいるのが特徴です。
ただし、この神話の引用が曲者で、ギリシャ神話に明るくない身としては短いページ数の中で事件関係者の他に、大したセリフもない神話世界の住人たちの名前(しかもカタカナ)と人間関係まで把握しなければならないため、思いの外、重労働だったりします。
また、1話40ページ強の短編で事件を描かなければならない都合上、解決に際しての手掛かりのいくつかを“知る人ぞ知る豆知識”に投げている箇所が散見されるのも気になります。小ネタを伏線として利用してくるところには事実、驚かされはしたのですが、たまたま私が某アニメを再放送で全話視聴していたから効果があったものの、イマドキの若い世代は基本的にそこまで詳しくないだろうし、伏線の張り方としては若干不公平。全体に短編小説というスタイルが、どうにも足を引っ張っているように思えます。
全6編のうち、最も好みだったのは1本目の「牡羊座」。本文とは別の欄外に、あまりにもわかりやすいカタチでヒントが示されていたにも関わらず、完全にスルーしていました。こういう仕掛け方は好きですね。
それはそうとて余談ですが、作中に登場する“イ非句”には流水大説に近しいものを感じました。初期「JDC」とか、だいたいこんなノリだったような。
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