2013.03/16 [Sat]
古野まほろ『セーラー服と黙示録』
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★★★★☆
孤島に建設されたミッション・スクール聖アリスガワ女学校。そこは日本随一にして、ヴァチカン直轄の探偵養成学校であった。探偵になるために日々勉強に励む生徒たち。そんな中、超難関と噂される、卒業のための最終特別試験が始まる。その問題は、校内にふたつある鐘楼に設置された密室において、二十四時間で主に最も近づくこと――つまりは奇蹟を起こすこと。苛烈な競争を勝ち抜いたふたりの生徒が幽閉され、特別試験がスタートするが……果たしてふたりの少女は、鐘楼尖端のおそろしい高さのラテン十字架に磔となって殺害されていた――!?
昨年12月に発売された古野まほろの新作長編――といいつつ、来週には『天帝のやどりなれ華館』の発売が控えているので既にひとつ前の作品となってしまったわけですが。
全寮制のミッション系女学院を舞台に、ゴテゴテに装飾されたキャッチーな死体と不可能状況、理路整然とした論理的推理、女子高生のキャッキャウフフに巨大な陰謀まで絡み、初期まほろテイスト全開な内容でお送りします。講談社ノベルスから離れてからというもの、どこかしっくりこない作品が続く中、古野まほろの原点を思わせる小説に再び巡り遭えたのは喜ばしい限り。これです、こんなまほろが読みたかったのです。
本作最大の特色は、一件の事件に対して三人の探偵がそれぞれ、ホワイダニット、ハウダニット、フーダニットを分担して謎解きを行い、最終的にそれら3つを統合して真相に辿り着く点でしょう。これにより、ひとつひとつの推理に多少弱い部分があろうとも、多角的に進められる推理が互いに互いを補完する形となり、ちょうど「色の三原色」の有名な図のように、重なり合った部分が揺るぎのない答えになる。この試みは面白かったです。
また、探偵女学校(相変わらず有栖川有栖を愛しすぎ!)ということで、学校の課題や学年末テストの体で作中にはミステリ力を測る問題がいくつか登場し、これがまた論理パズルとしての質が高い。マードレ・バルバラの宿題に対する今日子さんの解答には、思わず膝を打ちました。
電子書籍雑誌『小説屋sari-sari』上では、早くも「聖アリスガワ女学院の事件簿」なる連載も始まり、若者向け青春ミステリを得意とする角川書店とまほろの相性は意外と良いのかもしれません。例によって「天帝シリーズ」と絡む部分もあり(時系列的には『探偵小説のためのゴシック「火剋金」』の後くらい)、今後も目が離せないシリーズになりそうです。
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