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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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石崎幸二『復讐者の棺』

復讐者の棺 (講談社ノベルス)復讐者の棺 (講談社ノベルス)
石崎 幸二

講談社 2008-08-07
売り上げランキング : 191702

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★★★★☆
だって区別がつかないもの、あんたたち。誰が何を言ってるかわからないじゃない
大手スーパーKONO堂は、伊豆沖の孤島にある、経営破綻したテーマパークを買収。再建のため、本社から島に派遣されたスタッフが惨殺された!死体は棺に入れられ、そこには1通の封筒が。手紙の主は、10年前にKONO堂で起きた殺人事件の復讐者を名乗る。孤島を舞台に巻き起こる連続不可能殺人! 事件の背後にある深い闇とは!? 世界一、人質に向いてない女子高生コンビ(ミリア&ユリ)と迷探偵 ・石崎幸二が真相に迫る!


「ミリア&ユリ」シリーズ 第5作。
 前作『袋綴じ事件』から6年を経て刊行された「ミリア&ユリ」シリーズの復帰作。第1作『日曜日の沈黙』に登場した女刑事の斉藤さん、ミリアとユリの幼馴染みの仁美を新たにレギュラーキャラに加え、丸ごと島ひとつぶんテーマパークとなっている孤島での殺人劇に巻き込まれます。
 6年も経つと書き方も変わるもので、これまでの作品ではミリユリ(と石崎さん)の雑談に費やされていた前半部分の余剰なギャグパートがばっさりカットされ、200ページに満たない頁数の中にぎゅっと凝縮された非常に密度の濃い作品となっていました。ミステリとしてはより締まった形になったのに、このそこはかとない淋しさは何なのだろうか……。あのギャグにギャグを重ねる無意味な会話の応酬も立派に魅力のひとつなのに。
 まぁ、そのへんは今回も抜かりなく、既に恒例となりつつある“書き分けできていない”ネタを始め、受賞しても1円の賞金も出ないメフィスト賞批判、とメタなネタの数々が炸裂するのは相変わらずなのですが。

 展開はとにかくスピーディー。島へ着いたと思ったら、早速仁美が誘拐され、瞬く間に連続殺人へと発展していきます。そこから先は、出るわ出るわの“顔なし死体”。いわゆる孤島モノは、外界と遮断された状況で殺人事件が発生するため、警察の介入を排除できる=名探偵の活躍する余地が残されるという作劇上利点からミステリの舞台設定に使われることが多いですが、本作ではそうした特殊な状況にあっても、封鎖状況が解かれてしまえばいずれ警察が解決に乗り出すと断言しているのが特異です。警察の介入がある以上、たとえ顔なし死体を入れ替わりに用いたところで、DNA鑑定で身元を割り出せる。
 そうした現代の科学捜査の精度を前提とした上で、それでもまだ本格ミステリ的なガジェットは通用するのか?という命題に挑んだ作品なのです。本格ミステリは決して現代科学に屈しはしない。充分な驚きと共に、それを証明してみせた一作です。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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