2009.09/13 [Sun]
古野まほろ『探偵小説のためのインヴェンション 「金剋木」』
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★★★★☆
吸血鬼密室――ほうゆうことか
あかねたちが迷い込んだ樹海の廃校――そこには月光のような兄妹たちが住んでいた。彼らを呪う伝染病とは?彼女らを嬲る諚とは?被害者の侵入をも拒む密室で、杭打たれた少女は永遠の眠りに沈み、血の饗宴は続く!ごめんコモ……あたし……穢されちゃった……。最期の口吻まで、あとちょっと……。
『探偵小説』シリーズ 第4作。
はい、前回の構成が好評だったのか、妄想パートも一掃されて俄然読みやすくなった本作。
水里あかね、シリアスに目覚めたのか!?
そんな『金剋木』、煽り文句は“日本本格史上初の「人外密室」”、被害者すら入れないはずの密室殺人。
はてさて一体全体どういうことなのかと思っていたら、殺されたのは吸血鬼という人外にして埒外な存在。被害者、犯人候補共にイレギュラーな性質(姿をコウモリに変えられたり、日光を浴びると灰になったり……etc)を持ち合わせる中、その殺“人外”事件を定められたルール(前提条件)の下で推理してみせるという、とても妖魔の類が登場するとは思えないくらいに本格なつくり。
作品中にもあった“人外にして埒外”というワードは、西尾維新が零崎一賊を称して使った言葉でもあって、思わず反応してしまいました ナツカシス
懐かしい繋がりで思ったのですが、『土剋水』での外田警部とコモの会話に、“超能力もルールがしっかりしていれば本格”みたいなセリフがあったけれど、今回はまさにその体現でした。
しかし今回もまほろさんはすごい。緻密なルール設定によって、いくら相手(?)が超常の主であろうが、現実レベルで充分に推理が可能なようにつくられているんだもの。これじゃあ文句は言えまい。
今作はとにかく伏線が至るところにばら撒かれていて、ひとつの方向からだけでなく、色々な事柄から犯人の特定にまで繋げることができます。決定的証拠はひとつじゃなくて、諸々が積み重なっての犯人特定なんです。第二事件現場の遺留品、“謎の75円”の出所にしても、よくよく考えたら――いや、考えなくともそれしかないわけで。そこからでも、そのポイントからだけでも、充分にアノ人を怪しむことができたハズなんですよね。してやられた!
少し話は変わりますが、米澤穂信の『夏季限定トロピカルパフェ事件』が発売された際、年末のミステリランキング本で“キャラクターの存在自体がひとつの伏線・推理の契機になっているところが秀逸”みたいな旨の評を見掛けたことがあります。あの作品では「小佐内さんの性格ではこんなことは絶対ありえない」というところから推理が発展していったわけですが、この『金剋木』でも同じことがいえます。ある人が持つ、ひとつのキャラクター性からも推理が可能という、この設計。もう古野まほろ、ありえん!
少子が関わってこなかったのもシリーズの幅を広げてて良いと思います(ネタバレじゃないよね?)
というかネタバレといえば、『水剋火』と『土剋水』の犯人バレが冒頭でされていたけど、あれはマズくないですかね?それと諾子先輩、メタ的に推理するのはズルいのでやめてください。外れてるし。
次作で五行は一周。
二順目に突入するのか、タイトルが大きく変更されるのか、はたまたシリーズ完結か?
希望としては当然、二順目突入ですよ?まほろさん。
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