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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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天祢涼『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』

セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎
天祢 涼

講談社 2013-01-24
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★★★★☆
天才だとしたら、怒りを買うデメリットがわかっていながら、東堂の逆鱗に触れた。
バカだとしたら、怒りを買うデメリットがわかっていなかったのだろうが、東堂の言動が許せなかった。
いずれにせよ、そこに善壱先生の姿が重なったのだ、朧げではあるが。

弁舌巧みで爽やか、でも天然(おバカ)な世襲議員とお堅いサムライ秘書が5つの難事件に挑む! 急逝した父のあとをうけ、国会議員になった漆原翔太郎。初登院早々に飛び出した問題発言や問題行動で、支持率急落、早くも次の総選挙は赤信号!? 危機的状況に頭を痛める秘書・雲井進のもとに舞い込んだのは、マンションの建設反対運動。
支持率アップのため翔太郎をけしかける雲井だったが、唖然とする行動に出られてしまい……?


 天祢涼の新作は以前、『メフィスト』誌上で行われた、メフィスト総選挙にて発表された「議員探偵・漆原翔太郎」を元にした連作ミステリ。このメフィスト総選挙というのは、最近のメフィスト賞受賞者の新作短編を『メフィスト』本誌に掲載し、最も評判の良かったものを連載作品として迎えるというイベントで、結果は望月守宮が見事に連載権を勝ち取りました。私が続きを読みたかった白河三兎の「シンデレラガール」も落選してしまったのですけれど、こうして天祢っちの作品が単行本化されているところを見るに、諦めるのはまだ早いかもですね。

 本作『セシューズ・ハイ』は問題発言連発のおバカな世襲議員、漆原翔太郎が秘書の雲井に連れられた先々でぶつかった案件を解決していく日常の謎モノのミステリです。公園の取り潰し反対を訴える地域住民からの陳情や勲章授与の唐突な取り消し、選挙期間中のスパイ行為、取材日時にまつわるスキャンダル疑惑などの事件を通し、最終的には地方経済は元より、日本全体を震撼させ兼ねないより大きな問題が明るみに出ることになります。
 全5章で構成される連作の各短編はおよそ40ページ強。決して長いとはいえない分量ですが、毎回、翔太郎の不甲斐なさをフォローしようとする雲井による尤もらしい推理が一度披露され、その後で決まってひっくり返しが待っているという、二段構えを徹底して行っている点が凝っています。
 中でも第三話「選挙」は特に収まりが良く、3人の容疑者の中からスパイ犯を限定していくまでの流れがとにかくスムーズで、伏線の散らし方も含めてまったく無駄がありません。

 また、もうひとつ着目したいのが、お騒がせ国会議員という翔太郎のキャラ設定を存分に活かした最終章のケレン味です。それまでの4篇で撒かれた伏線を巧みに回収していくクライマックスの推理パートは、圧巻そのもの。その場にいるすべての人間が翔太郎の推理を固唾を飲んで見守り、絶対に失敗できない状況下で犯人と対決するスリリングな緊張感。その臨場感はまるで、読者自身がその場に居合わせているかのようですらあります。「名探偵 皆を集めて 『さて』と言い」とは良く述べたものですが、かつて、ここまでカッコ良いミステリの謎解き場面があったでしょうか。否、ない。
 はっきりいってこの作品、呑まれます。早くも、今年度『本ミス』の大本命。10位圏内はほぼ確実に狙える出来でしょう。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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