2013.02/23 [Sat]
石崎幸二『袋綴じ事件』
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★★★☆☆
でも石崎さんのことだから、『もしも彼女ができたら、夜浜辺を散歩するのが夢なんだ』とか、
もてない予備校生みたいなこと考えてるかもよ
孤島に隠棲する才能ある研究者が、自慢の施錠システムの中で襲われた。「嵐の山荘」状態で人間の出入りはなし。荒らされた室内で何が起こったか。事件の鍵は石崎が持ち込んだ袋綴じのミステリィ本に。封印が破られた瞬間、啓示は訪れた!?
「ミリア&ユリ」シリーズ 第4作。
講談社ノベルス20周年企画として書き下ろされた「密室本」のうちの1冊です。密室本といえば、私が講談社をノベルスを読み始めたのがちょうどこの頃だったので格別に思い入れがあるわけですが、本作はまさしくそういったコアな講談社ノベルス読者のために、自身もまた講談社ノベルスが好きで好きで仕方ない石崎さん(作者)がありったけの愛を込めて書いた作品です。文章の一文一文からその想いがひしひしと伝わってきて、同じ講談社ノベルスファンとして身悶えしまくりでした。
以前、西尾維新が「メフィスト賞を受賞すると最低3作の刊行が確約され、密室本はその限りではない」と述べていましたが、「ミリア&ユリ」シリーズは本作の刊行を最後に約6年間沈黙するという、実質的な打ち切りの憂き目に遭っています。ただ、この作品を手に取るとその理由も頷けるといいますか……。あまりにも内向きにすぎるのです。
作中に講談社ノベルスが登場し、しかもそれが密室本でミステリ的な仕掛けにも寄与してくる徹底した拘りが、逆に新規の読者を突き離すことになっているように思えるのです。“講談社ノベルスの犬”のくだりなんて爆笑しながら読んでましたけど、そりゃあ一般の人からしたら何じゃこりゃ?ですよ。まぁ、その報われなさ、残念さがこそが石崎幸二だったりするのですが(もはやすっかり石崎ファンです)
今回も人死にの出ない孤島モノではあるものの、事件そのものよりも犯人を指摘するための方法、どうやって石崎さん(登場人物)を苛めてやるかについての伏線を張ることに注力しすぎているきらいがあり、純粋な謎解きという面では既刊に比べるとやや物足りなかったです。
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