2013.02/22 [Fri]
石崎幸二『長く短い呪文』
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★★★★☆
自分にかけられた呪いを解くため少女が帰った先は、その一族だけが住む孤島。かつて姉を交通事故に追いやり、今度は妹の双子にまで伸びる魔手の正体とは?
「ミリア&ユリ」シリーズ 第3作。
前作で登場したまみちゃんの友人が、自らに掛けられた「呪い」を解くと言って故郷の島に戻ったことに端を発する脅迫めいた出来事に秘められた謎を暴くため、サラリーマン石崎幸二とミリア&ユリの女子高生コンビが今回も奔走する。
因習に縛られた孤島で起きる不可解な事件――と聞くと、いかにもベタな本格の香りがしますが、そこを敢えて外してくるのが石崎流。あくまでも死人は出さず、当事者の美希ちゃんとその一族に対する「呪い」の正体を解明し、その呪縛から解放するすることを至上目的としたミステリになっています。
が、相変わらず本題に入るまでが長い長い。冒頭から、まみちゃんの補習対策にかこつけて歴史上の事件をミステリにこじつけるやりとりが延々と続き、さらにはミリアとユリ自身に自分たちの書き分けができていないことについて言及させるという禁断すぎる自虐ネタが炸裂する始末。いや、そんなノリも好きですけどね? どんだけなんですか、石崎さん。
雑談パートは確かに判別し難いですけど、基本的に解決編で探偵役を務めるのがミリアですよね。わかってますよ。というか、まみちゃんを始め、ミリユリ以外のキャラクターの区別はつくのだから、コレはもう初期段階の設定ミスを引き摺っているとしか言いようがないです。 『日曜日の沈黙』の時点でもう少し差別化させていれば違ったんだろうなあ、と読んでいてしみじみ思いました。
本作で提示される「呪い」の謎解きは、われわれの日常生活における常識を根底から覆してくるような代物で、背筋にぞくりとくるものがあります。しかも、そんなちょっと突飛ともいえる発想に読者が辿り着けるようにきちんと伏線も張られ、そのことを充分に可能だと知らしめるだけの舞台も整えられている。こういうミステリは本当に堪りません。
それだけに、ラストのどんでん返しはむしろ蛇足感の方が強かったです。とはいえ、どこか寂寥感のある結末といい、私の嗜好にどストライクな作品でした。
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