2013.02/09 [Sat]
北山猛邦『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』
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★★☆☆☆
成人するまでに嫁がねば一族を追放する――山に閉ざされた村にある名家・後鑑家のお嬢様に脅迫状が届いた。差出人は戦国時代の姫!? 彼女の20歳の誕生日が迫る中、相談を受けた探偵助手学部の君橋と月々が超サプライズな方法で完全解決……したはずなのに、村に残る伝説を調べていた彼らのゼミ教官である女探偵・猫柳十一弦は惨劇が起きると推理。事件を止めるべく村へと急いだ。
「猫柳十一弦」第2作。
昨年度のミステリマイベスト第5位に挙げた『猫柳十一弦の後悔』の続編です。前作がミステリの観点からも読みもの的にも凄く面白かったので期待していたのですけど、これはちょっと……。
今回の舞台は本格ミステリではお馴染みの因習に縛られた寒村。学友の小田切さんからクンクンと月々の元へ、脅迫文を受け取った知人を助けてほしいと頼まれ、一同は事件の阻止に奔走することになります。現代社会におけるクローズド・サークルの在り様を模索した前作に続いて本作は、いわゆる大団円的な展開からスタートし、事件が発生する前に犯人を指名、その後にトリックが披露され、登場人物が順々に出揃っていくという通常のミステリ小説とはまったく真逆の進行を見せる、これまた実験性の高い作品でした。
しかしながら、この特殊な構成が物語を展開する上で巧く活かされているとは言い難く、加えて猫柳の“事件を未然に防ぐ”といった性質により、犯人の仕掛けたトリックが発動する前に解かれてしまうため、どうにもすきっとしない。ドミノ倒しでも綺麗に完成しているものを一気に崩すから爽快さがあるわけで。全体の6割でドミノが止まってしまったら消化不良感とやり場のないもやもやしか残りません。この作品でやっていることは、つまるところそれと同じなのです。中途半端で据わりが悪い。
猫柳十一弦とクンクン、月々の助手ふたりとの掛け合いを愉しむだけならばともかく、ミステリ小説としては宜しくないです。
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