2013.02/03 [Sun]
赤月黎『魔女狩り探偵春夏秋冬セツナ』
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★★★★☆
僕の手の届くところに君がいた。ただ、それだけだ、ってね
魔法の対価は人間の魂一個。本来魔女は、自分の魂を少しずつ溜め、それを悪魔に与えることで魔法の力を使っていた。しかし、いつの日か己の欲望を叶えるために人を殺し、魂を奪うことで魔法を使う悪しき魔女たちが現れてしまった。古き善き魔女の末裔であり、正義の心と信念を持つ「魔女狩り」は、そうして悪しき者たちを駆逐するために日夜、戦っていた。魔女に殺され魂を奪われてしまった少年・姫崎クオン。一度は死んだはずの彼を助けたのは、魔女狩り探偵・春夏秋冬セツナだった。クオンは、セツナのパートナー(ペット!?)として、己の魂を取り戻すためにも魔女犯罪に立ち向かうのだが――。
殺人を犯した悪しき魔女の正体とその際に用いられた魔法の特定を主題にしたラノベミステリです。題材として取り上げられているのは、ミステリにおいては王道中の王道である“顔なし死体”。テーマとしてはそれこそこれまでに何千、何万と書かれてきた使い古された代物であり、トリックも極めてオーソドックスだったりするのですが、そこに魔女狩り養成学校で起こった殺人事件を魔法の存在込みで推理するいわゆる特殊設定モノの体裁を掛け合わせたことで、きちんと“意外な真相”を創出できています。
むしろこの作品に関しては、誰もが考えるであろうありきたりなトリックを使うことにこそ意味がある。まさに「新しい酒を古い革袋に入れる」。タネ自体は凡庸でも、見せ方次第でいくらでも新鮮なものに生まれ変われるという好例でしょう。
そうはいっても描き足りていない部分があることも否めません。まず第一に、作中で命題とされる魔法の特定についての説明がざっくばらんなため、読者側が魔法でどこまでの行為が可能なのか想定しづらいのです。結果、解決編で示された魔法以外にもやりようによっては同じ状況がつくれてしまう可能性が出てきてしまっています。もう少し限定条件を付けるなりして唯一無二の正答に誘導してあげる必要があったように思いました。
また、メイントリックに関しても問題編の人物描写においてそれらしいことをあと一文程度挿入して匂わせるだけでも、ミステリ的な確度がぐっと上がったハズで、そうした細々した点が勿体なく感じられる作品でもありました。
ちなみにこの小説、主人公のご主人様(♀)がSっ娘気質なので、魔力の供給におみ足や汗の香るうなじにキスさせたりと若干フェティッシュなシチュエーションが爽やかながらエロいです。べ、別に私はそんな変態的な趣味を持ち併せてなんかいないんだからねっ!
セツナのキャラ付けとして全篇に渡って作家や偉人の格言、古典からの引用が見られるところも、ちょっと海外ドラマちっくで洒落ています。キャラの関係性に未処理の部分があるので続刊も出るのかな。期待して待っておきます。
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