2009.09/03 [Thu]
西尾維新『させられ現象』
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★★★☆☆
あなたには見当もつかないことでしょうけど、これはね、テロリズムなのよ
学校をさぼって本屋を訪れた両島なことは、そこで売り場の本を投げては放り、投げては放りを繰り返す女子高生に遭遇する。ひととおり放り終えた彼女は、今度はそれらの本からカバーを剥がし、それぞれてんでばらばらに付け替えてゆく。一連の行動を「テロリズム」と称する彼女、鳩井かるまの真意とは――。
『なこと写本』第1作。
『ユリイカ』2004年9月臨時増刊号に掲載された作品。
なぜ今更『させられ現象』なのかと訊かれたら、
2004年当時の自分は、まだ『なこと写本』――というか『させられ現象』の良さをわかっていないぼんくらでした。例えるなら、ビールの味もわからない子供のようなものですね。初めてこの作品を読んだときの感想は「……なんか微妙」でした。なんだかんだいってあの時は、西尾維新のもつキャラクター小説的側面に魅せられていただけの、だめな少年だったのかもしれません。しかし、あれから5年。愛読家として立派(?)に成長を遂げた今では、この『させられ現象』の魅力、そして鳩井かるまによる“テロリズム”の素敵さが身に染みてわかります。
そういった意味では、西尾維新ファン歴は長いですが、その方向性は今と昔、かなり変化しているかもとか思っちゃたりしています。
本と人とをめぐるちょっと不思議な物語、『なこと写本』。今回は“本との出逢い”について。
思えば、西尾維新の『クビキリサイクル』と出逢ったのもほんの偶然でした。本屋からさあ帰ろうというときに、たまたまノベルスコーナーの前を通って、玖渚の表紙が目に留まって、手に取ったんですよね。それまでノベルスなんて読んだことも触れたこともなかったので、かなりの奇跡的確率です。で、そのとき出ていた西尾作品をすべて読み終え、次に何を読もうかと考えたときに、同じメフィスト賞作家の作品を、ということになったんです。
なのであの日、あの時に今は無くなってしまったあの本屋さんに行っていなければ、現在のようにミステリ好きにもなっていなかっただろうし、下手をすれば小説を読まなくなっていたかもしれません。
西尾維新はもちろん、霧舎巧にも古野まほろにも出逢ってなかったに違いない。
そんな“人生が変わっちゃうような本”との出逢いを、カバー違いの本を手に取るという偶然からもたらすこと、それがかるまの行った「テロリズム」です。うん、確かに素敵かもしれない。
そういう感慨深さを、誰にも持つ思い出と共に想起させてしまうのがこの『させられ現象』という作品の魅力なではないでしょうか。
ただ、語り口が相当まどろっこしいというか冗長というか、うざったいというか。そこだけが難点っちゃ難点ですね。
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