2013.01/18 [Fri]
高田崇史『毒草師 パンドラの鳥籠』
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★★★☆☆
ひょっとすると、これから行く場所では、ぼくらの想像を絶するような出来事が今、進行している
「魔女の薬草」を探し求めていた生薬学者が失踪した。行方を追う編集者の西田は、失踪場所が「魔女の鳥籠」と呼ばれていることを知る。そこは、齢三百歳を超える魔女が棲むとの言い伝えがあるばかりか、かつては首なし連続殺人事件が発生し、さらには、老いさらばえ、白髪となった大学生の溺死体が発見された場所だった!西田は自称・毒草師の御名形史紋に協力を仰ぐが、彼は「浦島太郎を調べたほうが早い」と謎の言葉を残す。やがて彼は、「浦島太郎の玉手箱」と「パンドラの箱」の繋がりを、神代の時代と重ね合わせて事件を紐解いていき――。
「毒草師」第3作。
高田崇史の看板作品「QED」のスピンオフシリーズが4年ぶりに刊行。前巻のラストで今後の展開を匂わせるような台詞があったので出るだろうとは思っていたものの、あまりに音沙汰がないものだから半分諦め掛けていたのも事実です。まずはともかく、神凪さんレギュラー加入おめでとう!
さすがに4年間もシリーズ新刊が出ていないと作風も変わってくるもので、「QED」の完結を受けてかどうかは定かでありませんが、これまで比較的軽めに読めた本シリーズが今作では蘊蓄量を増し増して、より本家に近いテイストに仕上がっています。事件の解明よりも歴史の謎解きに重点を置いている点も中期以降の「QED」と同様です。
この変化はあまり歓迎できませんでした。というのも、高田崇史といえば一般に歴史の闇をテーマに取り上げる作家として認知されていて、それはそれで間違ってはいないのですけれど、実際には歴史の謎よりも現代の事件の方に焦点を当てた作品の方が断然面白いのです。中でも十八番なのが現実世界からちょっと浮き上がった類のトリックで、歴史の謎はその飛び道具的発想を「アリ」なものとしてミステリの世界観に繋ぎ留めるための補助に用いられています。
本作においても「首切りの論理」の意外性は十二分です。しかしながら、その後で詳らかにされる『浦島太郎』の謎解きが強烈すぎてミステリ部分が完全に食われてしまっている。これが非常に勿体ない。
不可解な連続殺人事件が日本という国を根幹から揺さぶる秘密に発展するスケール感には毎度のことながら圧倒されますが、そこをもう少し我慢して是非ミステリとしての精度を高めて頂きたい――というのが一ファンの切なる願いです。
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