2013.01/09 [Wed]
西尾維新『めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川 小説版(下) 水槽管理のツークツワンク』
![]() | めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川 小説版(下) 『水槽管理のツークツワンク』 (JUMP j BOOKS) 西尾 維新 暁月 あきら 集英社 2012-11-19 売り上げランキング : 56020 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
嘘でしょ……、負ける気満々だったのに勝負が始まった瞬間私が勝っちゃった……、
どれだけ勝ち運がないの、この男子……
すべてを「なかったこと」にするスキル「大嘘憑き(オールフィクション)」を持つ男・球磨川禊。安心院さんの端末との勝負を順調(?)にクリアし続ける中、予想外の人物が立ち塞がる。
「小説版 めだかボックス」第2作。
上巻にて安心院さんから送り込まれたふたりの刺客を見事に撃破し、勇者の剣を手に入れた球磨川。その続きとなる下巻はまさかの展開が待っていました。殆どギャグシーンも同然のトラブルによって球磨川はあっけなく敗退。その後を継いで須木奈佐木さんが単身、安心院さんの端末に闘いを挑みます。
冠作品にも関わらずあっけなくフェードアウトして最後の最後まで出番が回ってこない球磨川先輩がさすがです。しかも、余裕綽々で相手を螺子伏せていたように思えた上巻のバトルも、実は必要以上に遠回りをした上での勝利だったことが明かされ、その負けっぷりを存分に見せつけられます。これぞ、われらが球磨川禊!
それでいて、最終的には彼にとって最も良い形で物事が収まってしまうところが球磨川というキャラクターの凄いところですよね。まさに負けるが勝ち。絶対に勝てないことがわかっているのに、本編で球磨川が助っ人参戦してきたときの安心感は異常ですもん。
須木奈佐木さんと隠蓑姉妹の対決はさり気ない伏線を決め手に活かしてきて、実に西尾維新らしい決着の付け方でした。『刀語』や『新本格魔法少女りすか』など、こういったミステリ的な手法を異能バトルに取り込んでくるところが西尾作品の面白さでしょう。
なんだかんだで誰よりも仲間を大切にする球磨川と、それに気付いていながらも見て見ぬフリをする須木奈佐木さんの関係も素敵です。このコンビには、続刊を出すなり何なりしてもっと活躍の場を与えてあげてほしいなあ。
須木奈佐木さんの『殺気姫』なる二つ名の由来や、「悪平等」編でなぜいきなりアイドルになっていたのかも明かされ、前作と同様に本編の隙間を埋めるスピンオフとしても機能しているので『めだかボックス』ファンは必読です。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form