2013.01/05 [Sat]
石崎幸二『日曜日の沈黙』
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★★★☆☆
もしかして、石崎さんの言っているミステリィってこの程度のものなの?
まさか、その遺書を記憶した日付が、死んだ日より後だったから、
これは被害者が書いたものじゃないとか、その程度のレベルじゃないでしょうね
『ミステリィの館』へようこそ。もともと当ホテルは密室で死んだ作家・来木来人の館。これから行われるイベントでは、彼が遺したという「お金では買えない究極のトリック」を探っていただきます。まずは趣向をこらした連続殺人劇をどうぞ。そして興奮の推理合戦、メフィスト賞ならではの醍醐味をご堪能下さい。
第18回メフィスト賞受賞作。「ミリア&ユリ」シリーズ 第1作。
というわけで読みました、石崎幸二のデビュー作。私は中学時代にたまたま読んだ西尾維新『クビキリサイクル』に衝撃を受けてメフィスト賞に興味を持ち、そこから本格ミステリに入った人間なので当時読み耽った西尾維新の「戯言シリーズ」、清涼院流水の「JDC」、高田崇史の「QED」「麿の酩酊事件簿」、霧舎巧の「《あかずの扉》研究会」「私立霧舎学園ミステリ白書」などのシリーズには特段の思い入れがあります。
そしてもし仮にこの「ミリア&ユリ」をその頃読んでいたのなら、きっと石崎幸二は自分にとって大切な作家になっていたことでしょう。コミカルなキャラクターに『ミステリィの館』で開催される推理劇、究極のトリックの謎――。私に多大な影響を与えたあの懐かしい空気感に満ち満ちているじゃないですか! いやー、これはもっと早く読んでおくべきでした。
肝心の中身はというと、タイトルや装丁、あらすじから受ける印象とはまったく異なり、どちらかといえば日常の謎に近い人が死なないタイプのミステリです。密室で自殺を遂げたミステリ作家が最後に遺した究極のトリックとは何なのか、彼は本当に自殺だったのか。「何を推理するのかは参加者の自由」という課題不明のまま続けられる推理イベントに隠された意図。これらの謎に自由闊達、傍若無人な女子高生ユリ&ミリアと、出逢って早々彼女らに気に入られ良いように使われるサラリーマンの石崎幸二が挑みます。
究極のトリックについては正直かなりの脱力系ではありますが、問題の真相に辿り着くまでの間に用意されたダミー推理の数々で読み手をあっちへこっちへと翻弄してくるため、全体としては意外と悪くありません。中でも、とある人物に対して罠を張るためにミリアが披露する推理がこじつけなのに異様な完成度で笑えます。というかユリミリコンビのダメ出しが基本的にレベル高いですよね。そして、女子高生たちが無邪気な態様で読者のミステリ愛を完膚無きまでに潰していくという。何このドM系ミステリ。
とりあえず楽しかったので続きも読みます。それにしても、ユリとミリアは噂どおりの書き分けできないっぷりで読んでいて手こずりました。
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