2012.12/25 [Tue]
円居挽『今出川ルヴォワール』
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★★★★☆
ぼくの考える恋人同士というのは
……こう赤い糸を引っ張ったり、引っ張られたりする関係のことを言うんですよ
京都・河原町今出川にある妖しき寺・大怨寺で殺人が起きる。容疑者とされたのは、龍樹家の龍師・御堂達也。彼の処遇をめぐって私的裁判「双龍会」が開かれるが、それは壮絶なサバイバルゲーム「権々会」へのプロローグに過ぎなかった。達也はある復讐を胸に大怨寺に乗り込み、権々会へ挑む――果て無き騙し合いの勝者は?
「ルヴォワール」シリーズ 第3作。
今年の年末ランキングも一段落ついたところで、早くも来年度の対象作に突入です。シリーズ第3弾となる今作は、これまでの双龍会メインの構成とはがらりと変わって、達也の怨敵・大怨寺が主催する賭博勝負の権々会にて、如何にして相手をやり込めるかという、イカサマ対決に主軸が置かれています。
そのため、初っ端から双龍会パートに突入し、まさしく最初からクライマックス状態。達也を御贖に迎えた今回の双龍会は怒涛といっても良いくらいの読み応えで、特にギャグ同然に挿入されていた小ネタを裁判の決め手に再利用してみせた天親雹平による「螢返し」の極まり具合は、思わず「うおおお! 極まった!!」と心の中で叫んでしまったほどに素晴らしかったです。
逆に、後半戦はトリック一点突破なこともあり、本シリーズ最大の特色でもある畳み掛けるような論理展開が味わえず、結果として盛り上がりに欠けてしまった感があります。双龍会での極め技を権々会のトリックに利用するなど仕掛け自体は大分凝ってはいたのですけど、伏線もそれなりに目立って見え透いていたため、驚きの演出についてもいま一歩でした。
なまじ前半部の出来があまりにも良すぎただけに、後半でそれを越えられなかったのは惜しかったです。全体としては相変わらずクオリティの高いミステリではあるとはいえ、前2作と比べるとやや落ちる。個人的には素直に双龍会を中心に構成してくれた方が良かったかな。
物語的にも論語と撫子の今後が気になるクリフハンガーで、早くも次巻の刊行が待たれるところです。
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