2012.12/22 [Sat]
アガサ・クリスティ『邪悪の家』
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★★★★☆
いままで、わたしはうぬぼれきっていたのですよ。その罰が当たったのです。
そうですとも、わたしに罰が当たったのですよ。このエルキュール・ポアロは自信がありすぎたのです。
名探偵ポアロは保養地のホテルで、若き美女ニックと出会った。近くに建つエンド・ハウスの所有者である彼女は、最近三回も命の危険にさらされたとポアロに語る。まさにその会話の最中、一発の銃弾が……。ニックを守るべく屋敷に赴いたポアロだが、五里霧中のまま、ついにある夜惨劇は起きてしまった!
「エルキュール・ポアロ」第7作。
ふう、なんとか今年も滑り込みで「ポアロ」を1冊読めました。シリーズを1作目から読み始めて3年で7冊……。このままのペースだと本当にあと10年は掛かりそうな悪寒。さすがにそれは気長すぎるなぁ。せめて年5作くらいは消化しておきたいところです(と、いう話を前にも書いて反故にしたような)
本作は発表順としては前作『青列車の秘密』から戯曲『ブラック・コーヒー』を挟んでの7作目。短編集『ポアロ登場』も除くと、長編では6作目ということになります。『ブラック・コーヒー』はハヤカワミステリ文庫からノベライズ版が出ているので、最終作『カーテン』まで読み切ったらボーナストラック代わりに手を出す予定です。
今回の事件はポアロとヘイスティングズが三度命を狙われて三度生き残った奔放な女性、ニックと出逢うところから幕を開けます。未必の故意のような手口だけにあまり真剣に捉えていないニックの護衛役を、ポアロとヘイスティングズが買って出るのですが、そこは型破りなミステリがお得意のクリスティです。まんまと騙されてしまいました。
クリスティの小説は謎解き要素もさることながら、登場人物ひとりひとりも親しみの持てるように造形されており、作品毎にゲストヒロインがどういった道を選ぶのかも読みどころのひとつになっています。だからこそ、本作に施された仕掛けがより効果を発揮してくるのです。特に今回の場合、あの『青列車の秘密』の次の巻でもあるわけで、自らの作風をもミステリ的技巧のための歯車にしてしまう潔さはさすがですね。
シリーズ読者としては過去作への言及が多いのも嬉しいところ。ヘイズティングズが『アクロイド殺し』の事件について色々と思うところアリに語る場面は必読でしょう。
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