2012.12/30 [Sun]
日向まさみち『本格推理委員会』
![]() | 本格推理委員会 (角川文庫) 日向 まさみち 壱河 きづく 角川書店 2006-12-22 売り上げランキング : 946225 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
ごっこでもいいじゃん。正義の味方、カッコいいわよ。
血筋か知らないけど、小さな頃から正義の味方って好きなのよ。
小・中・高校の一貫教育学校・木ノ花学園の音楽室に、死んだはずの女性が現れたとの噂が流れる。探偵の素質を持った少年少女を選抜して結成された“本格的に推理をしてしまう委員会”『本格推理委員会』に、理事長の命令で入ることになった高校生の城崎修は、その怪談話の発生源を探り始めるが、そこには思わぬ真実が待ち受けていた。
第1回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。
高校進学早々、本格推理委員会なる組織に強制参加させられてしまうハメに陥った主人公が、自身の心の傷と向き合いながら小学部の特別棟に流れるピアノの音と幽霊の謎に対峙する青春ミステリ。
あらすじからもわかるように、ジャンル的には日常の謎です。文章にしておよそ400ページ弱。解かれるべき課題は「誰がなぜ、どのようにしてピアノの音を流したのか?」であり、事件の大きさ、トリックのアイデアに対して物語自体を長く取りすぎているきらいがあるとはいえ、本格ミステリとしては満足度の高い仕上がりでした。
メインの謎とは別途に補助として用いられているとある仕掛けには大層驚かされたのですが、この作品で真に見るべき点はどんでん返しそのものではなく、そのトリックを実現させるために何重にも渡って敷かれた伏線と、それによって整えられた舞台というプロセスの部分でしょう。殆ど目の前に正解をちらつかせているも同然なのに、まったく読者に気付かせず見事に覆い隠してみせています。この“仕込み”の丁寧さ、緻密さは感嘆ものです。
探偵役の修、妹のミア、早苗先生、幽霊を目撃した小学生の少女たちといった事件に関わる人々を壊れる寸前まで追い詰めて、どん底の状態から希望を見出し再起に繋げるストーリーも良し。設定やキャラクターがライトノベルちっくと切って捨てるのは勿体ない。物語性も高く、侮れない小説です。
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