2012.12/15 [Sat]
探偵小説研究会『2013 本格ミステリ・ベスト10』
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★★★★☆
非常に面白かったのは、第一話が放送された時に、
最新のミステリを読んでいる方は、今のミステリ小説の中では因果くらいのこと、
つまり変なものが出てきてその能力を出すみたいなことはやっている、と言う。
アニメを観ている人の中には、そういうことをやったらミステリじゃないという人が割と多かった。
今年はインタビュー特集! 日本ミステリー文学大賞受賞の皆川博子、『密室蒐集家』大山誠一郎、『UN-GO』の會川昇、そして竹本健治×法月綸太郎対談。もちろん本格ミスりランキングはじめ各記事も充実!
気が付けば、12月になってまだ2回しか本の感想を上げていないじゃないですか。いくら何日か更新を落してはいるといっても、書評ブログとしてこんなんで良いのでしょうか。申し訳ないです。
さて、毎年この季節は各種ランキング本が発売され、ミステリ読みにとっては祭りといって良い時期です。今年の『本ミス』は昨年よりも20ページ減の50円増し。ここ数年、お値段据え置きが続いていたのでちょっと淋しいですね。
今年は大御所勢・ランキング常連組がこぞって注目シリーズの新刊を出したこともあり、ベスト10圏内はかなりガチガチのぎゅうぎゅう状態。私は相変わらず、有名なシリーズ作品はだいたいスルーしているために制覇率は11/20。そんな中でも青崎有吾『体育館の殺人』(5位)の天祢涼『葬式組曲』(7位)のランクインが目を引きました。特に後者はネットで回っていてもやたらと評判が良かったのでランキング入りはしてくるだろうとは思っていましたが、まさかここまで上位だとは。個人的には、天祢っちは昨年度の『空想探偵と密室メイカー』の方が作品として断然面白かったのですが、ことミステリの嗜好に関してはマイノリティな人間だと自覚しているので文句は言いますまい。
20位圏内まで幅を拡げると『猫間地獄のわらべ歌』(14位)、『夏服パースペクティヴ』(15位)、『聴き屋の芸術学部祭』(16位)、『猫柳十一弦の後悔』(18位)とバラエティに富んだ面々がちらほらと顔を見せており、これらの作品が高い評価で迎えられたことは嬉しかったです。そして何といっても驚くべきは、今年のマイベストとして挙げていた友桐夏『星を撃ち落とす』が12位! 本格ミステリとしての質がすこぶる高いことは絶対的に保証できる作品でしたが、以前にも書いたとおり知名度的な問題でそこまでは奮わないと思っていたので。これはサプライズでした。未読の方はオススメです。
惜しむらくは愛川晶『ヘルたん』の完全圏外ですね。もっと注目されても良い出来なのに。初野晴『カマラとアマラの丘』(10位)を集計期間内に読めなかったことにも悔いが残ります。これはまぁ、宿題ということにしておきましょう。
インタビュー記事ではやはり『UN-GO』の會川昇が注目どころ。原作が坂口安吾だったとはいえ、本格界隈でここまで注目されていた作品だとは知りませんでした。確かに、風守初登場回のインパクトはSFならではで、本格ミステリという土壌でこういうぶっ飛んだ真相を見せてくれる映像作品は相当貴重ですからね。いまだとそれこそ、暗示による殺人をやってのけた『相棒』くらいのものです。
それと、読んでいて面白かったのが皆川さんのお話。敗戦の憂き目に遭って180度主義主張を変えてくる教師たちに対する当時の女学生たちの心情を語る部分が失礼ながらちょっとコミカルで。生きた意見ってこういうものを言うんだなぁと少なからず感じ入るところがありました。このお話が読めただけでも充分に価値ある一冊です。
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