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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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青崎有吾『体育館の殺人』

体育館の殺人体育館の殺人
青崎 有吾

東京創元社 2012-10-11
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★★★☆☆
……ああ、やっぱりこの人は、駄目かも知れない。
放課後の旧体育館で、放送部部長が何者かに刺殺された。外は激しい雨が降り、現場の舞台袖は密室状態だった!? 現場近くにいた唯一の人物、女子卓球部の部長のみに犯行は可能だと、警察は言うのだが……。死体発見現場にいあわせた卓球部員・柚乃は、嫌疑をかけられた部長のため、学内随一の天才・裏染天馬に真相の解明を頼んだ。なぜか校内で暮らしているという、アニメオタクの駄目人間に――。


第22回鮎川哲也賞受賞作。
 『2013本格ミステリ・ベスト10』第5位の作品です。一応、本ミス発売前に滑り込みで読み切ってはいたのですが、いろいろあってレビューが今頃になってしまいました。
 ある種の密室状態にあった体育館から犯人はいかにして逃げ遂せたのか、男子トイレに残された傘は何を意味するのかを大きな主題とし、そこから犯人を絞り込むロジック至上型本格。クイーンは処女作の『ローマ帽子の謎』しか読んだことがないので詳しくはわからないのですが、言われてみればなるほど宣伝文句どおり、現場に遺されたたったひとつの不可解な証拠品から鉄壁の状況に風穴を空け、論理を展開して突破してゆくスタイルはそれっぽいです。

 ただし、これも選評などで言及されているように推理における詰めの甘さ、そう上手く転がるだろうか?といった都合の良さを同時に感じさせる箇所も少なくありません。特に気になったのが基本部分での潰しの弱さで、たとえば警察の捜査の過程において体育館内に人間が隠れられる場所がないか等の検証は殆ど描かれていないし、傘の出所にしてもどこをどのように掃除したのかもわからない用務員の証言だけでは、それが元々館内にあった可能性を否定し切れていないのです。体育館の舞台下にはパイプイスをしまうスペースがありますよね? 舞台の幕の裏にだって傘は落ちているかもしれないですよね? 私の通っていた小学校ではそうしたところで遊べたし、現に様々なモノが落ちていました。
 なのに本作ではそういった部分をなおざりにして推理に入っているため、読んでいて据わりが悪い。密室の謎や傘の論理に気を取られすぎて、地を固めずに論理だけを先行させている感が極めて強いのです。

 それと探偵役がいちいちアニメネタをかましてくるのが壮絶に痛いです。いや、ね。パロディとか小ネタみたいなものは基本的に好きなんですよ。そもそもがミステリ自体、内輪ネタの多いジャンルでもありますからね。でも、ここに出てくる作品って、マクロスF、とある魔術の禁書目録、けいおん!、新世紀エヴァンゲリオン、らき☆すた、ひだまりスケッチ、ARIA、DARKER THAN BLACK、化物語、生徒会の一存、ストライクウィッチーズ、おジャ魔女どれみ、ドラゴンボール etc……ちょっと、作品のチョイスが浅薄すぎる。人気作だからとりあえず乗っかっちゃうミーハーヲタクの典型でしょう。引用に愛を感じないのです。「たとえマイナーでも、俺は落語天女おゆいが好きだぜ!」的な気概が感じられないのです。
 おまけに東方MADやら2ちゃんのスレタイちっくな章タイトルやら登場人物が女性声優のもじりやら、「とりあえずネットスラングやジョジョネタを入れておけばおk」みたいな、大量消費型ライトノベルやネット小説じゃないんだからさあ。
 さすがは現役大学生、若さ故の過ちというかなんというか。これ、10年後に著者本人が読み返した際に赤面確実なんじゃないでしょうか。


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Comment

前作が好きなら、新作はおすすめ♪ 

その後1年足らずですが、新作出ましたね〜
新作「水族館の殺人」は楽しく読んでしまいました。
待っていた本格推理小説の第2弾、面白かったです!

birthday-energy.co.jp/
ってサイトは青崎さんの本質にまで踏み込んでましたよ。専業作家ではなく就職することが彼の成長にとって良いんだとか。今後に期待です!
  • posted by 隅っこ 
  • URL 
  • 2013.09/07 15:29分 
  • [Edit]
  • [Res]

NoTitle 

>体育館の舞台下にはパイプイスをしまうスペースがありますよね?

作中で、古い建物だからそんなスペースは無いと書かれていますよ。
感想が、揚げ足取りたくて仕方ない感じですね。
  • posted by  
  • URL 
  • 2015.05/14 21:41分 
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それは申し訳ないです 

気になった箇所は何度か読み返したつもりでしたが、読み零していたようで失礼しました。
特に揚げ足を取ろうというつもりはないですよ。
  • posted by はろーすみす 
  • URL 
  • 2015.05/14 23:18分 
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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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