2009.08/30 [Sun]
江國香織『すいかの匂い』
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★★☆☆☆
インコって、いったん逃げたら戻ってこないんだって。
あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに――バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。無防備に出遭ってしまい、心に織りこまれてしまった事ども。おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。
えー これは相当評価に困る小説でした。
不思議な感覚にたゆたって、連れられたのはノスタルジックな夏の話などでは決してなく、痛みの伴う、異質さと夏の記憶。
本来、夏の昼間は暑くて読書の気分ではないのですが、これは敢えてそんな暑い――蒸し暑い日にこそ読みたい小説です。爽やかではない、夏のじっとりした暑さがよく合います。
この『すいかの匂い』、“残酷”という言葉がぴったりな雰囲気を纏っています。夏の日に灼かれるぴりぴりとした痛み。はっきりと“残酷”な話もあれば、別段そうでもない話もある。それでも全体に流れるのはやっぱり“残酷”という言葉なんですよね、なぜか。少女と残酷はよく似合う。
今作、全部で11の夏にまつわる少女の短編が収められています。ただ、はっきりと物語が完結してないというか「はぁそうですか」みたいな“流れ”だけで書かれた編がいくつかあったのが気になります。森見登美彦の『夜は短し~』のときにも思ったのですが、物語はわかった、ストーリーもわかった、で、「だから何なの?」って話なんですよ。何が言いたいのかわからない。「海辺の町」とか、意味わからん。
Somebody Help Me!
とりあえず、雰囲気だけで話をつくるのはやめてほしいです。
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