fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

長沢樹『夏服パースペクティヴ 樋口真由“消失”シリーズ 少女洋弓銃殺人事件』

夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)
長沢 樹

角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-11-01
売り上げランキング : 343545

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★★☆
私立都筑台高校2年生にして、弱小映研部長の遊佐渉は、新進気鋭の女性映像作家・真壁梓が、夏休みを利用して行うビデオクリップ制作のスタッフとして、撮影合宿に参加することに。そこには、美貌の1年生樋口真由の姿もあった。かくして、廃校となった中学校の校舎を改装して作られた山の中のスタジオでの撮影合宿が始まる。しかし、キャストとして参加していた女子生徒の一人が撮影中に突如倒れ込む……。なんとその生徒の胸には、クロスボウの矢が深々と突き刺さっていた!? 真由は残された映像をもとに超絶推理を始めるが、合宿は凄惨な殺人劇へと変貌してゆく――。


「樋口真由“消失”シリーズ」第2作。
 デビュー作『消失グラデーション』の“かわいすぎる名探偵”樋口真由が探偵役を務める第二長編。前作の主人公である椎名の物語は綺麗に終わっているため、今回は映研部部長の渉がワトスン役を務め、新しいストーリーが紡がれます。
 真由のようなキャラクターを一般ジャンルのミステリで探偵に起用していることにも驚きですが、何よりも読んでいてド肝を抜かれたのは、シリーズ未読者に対して1作目とまったく同一のトリックを再利用している点です。既読者にとっては読み進める上で邪魔にならず、初めて読む人にはどの巻から読んでも同じインパクトを味わえる。いやぁ、豪胆というか小狡いというか。下手をすれば手抜きと罵られてもおかしくないような紙一重の所業なのですが、すごいことを考えましたね。
 その手のジャンルに並々ならぬこだわりがある自分としては、シリーズの特徴でもある生々しいエロは“聖域”を穢しているようで好きではないのですけど。わかってない! わかってないよ、長沢さん! そこまで踏み込まないところにこそ魅力と矜持があるんだよ!!

 また、前作はトリック成立のためにかなり歪んだ状況を作り出していましたが、今作ではそうした無理をしてないのも良かったです。セミドキュメント風の推理劇にて出題されるクロスボウ密室(フィクション)の解答と、実際に発生する連続殺人(リアル)の真相が不可分なものとなっており、前者を詳らかにすることによって流れを辿ってごくごく自然に後者まで解き明かしてしまう運びの巧さには惚れ惚れします。
 解決編をいかに綺麗にスマートに見せるのかも、ミステリにおいては重要な課題のひとつですからね。その観点から述べると、本作は文句なく美しいです。
 450ページの長丁場のわりに、本題の殺人事件が残り100ページを切らないと始まらないというのはスロースターターすぎる気がしないでもないものの、小手先頼りの印象が強かった前作よりも確実にレベルアップしています。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

Trackback

トラックバック URL
»»この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

夏服パースペクティヴ

夏服パースペクティヴ (角川文庫)作者: 長沢 樹出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/12/25メディア: 文庫 <裏表紙あらすじ> 都筑台高校2年生にして弱小映研部長の遊佐渉は、気鋭の映像作家・真壁梓が夏休みに企画した撮影合宿に参加することに。しかし、キャストの女子生徒が突然倒れ込む。なんとその胸にはクロスボウの矢が深々と突き刺さっていた。セミドキュメンタリ...

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

09 | 2023/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析