2012.11/17 [Sat]
松永和希『権田原不動産気付バーネット探偵社』
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★★★☆☆
大学を卒業してすぐ、かねてからの夢だった探偵社を設立した俺。その名は、小さな頃から決めていた“バーネット探偵社”。資金不足で、事務所は不動産屋の一角だ。パートナーは不動産屋の孫娘、初依頼はまさかの猫捜し。大丈夫? こわもて営業マンの新右衛門、強烈なざあますバアさん、美人の大家さん、同級生警官の次郎長……怪キャラだらけのこの町で、いつしか猫捜しはストーカー事件に、相続をめぐる騒動に、そしてついには凶悪事件に発展して――。
E★エブリスタ電子書籍大賞2012優秀賞 ミステリー部門受賞作――ということで、いわゆるネット小説の書籍化になるのかな。私は、オビのあるなしで本屋を数軒回るような紙の本原理主義者なので電子書籍に関しては不支持な立場なのですけど、こうして一般の人が広く作家デビューできる門戸を開いたという面では、評価しても良いかもしれません。
本作は不動産屋の一部を間借りした探偵事務所に持ち込まれた迷いネコ探しの依頼から始まるミステリで、小さな事件が立て続けに重なって、最終的に大きな事件へと繋がっていくタイプのストーリーです。
自分でもニッチな好みだと自覚していますが、実は、探偵とお転婆女子小学生の組み合わせは私の中で唯一無二な理想のキャラ配置でして。表紙を見た瞬間、これは読まねばなるまいと琴線に触れたのでした。
全体の作風は極めてコミカル。登場人物は借金取りですら、どこか愛着の持てるような性格付けが為されています。その反面、ザマスおばさんや犯罪者予備軍っぽい引き籠りの浪人生など、いまどき滅多にお目に掛かれないような、下手をするとひと昔どころかふた昔ほど前の定型ともいえるキャラクターが出てくるところには、若干の苦笑を禁じ得ない。
章毎に挿入されるポエムも紙面に対して幅を取りすぎて、見た目にバランスが悪いです。
ミステリ的にはちょっと際どいところで、決して悪くはないのですが、犯人摘発の決め手となる部分の描写を字面どおりに受け取っておくべきなのかが、解答を突き付けられるまで判断できない点がネックといえばネック。いざ、明かされてみれば確かにそのとおりなのだけど、あったはあったものの単にそこまで描き込む必要がなかったから説明を省いただけ、と取れないこともないんですよね。問題の箇所だけ描写を密にするなりすれば、ミステリとしての精度がより上がったように思います。
とはいえ、お話はなかなか楽しめました。恋愛要素が未消化なままですし、これは続きが出るのかしら?
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