2012.10/26 [Fri]
マンガ総評:濱田浩輔『パジャマな彼女。』
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★★★☆☆
突然パジャマ姿のお化けになっちゃった!? 幼馴染みのまくらが、自分にしか見えないお化けになり、戸惑う計佑。彼女を元に戻そうと頑張るが、気になる先輩雪姫も現れて!? 全3巻。
『ニセコイ』、『恋染紅葉』と並んで連載された「ジャンプ」ラブコメ三国時代の一角にして、最初の脱落者『パジャマな彼女。』です。ジャンル的にはいわゆる“ひと夏”モノであり、夏の情景と繊細なタッチに三角関係、それを支える伝奇要素と、押さえるべき点をばっちし押さえてくれています。
ただ、これがやっぱり「ジャンプ」向きではないんですよね。「ジャンプ」ラブコメは基本的にエロ押しなので。幼馴染みのまくらが計佑への恋心を自覚しての戸惑いだとか、雪姫先輩の一途な恋愛感情だとか、硝子ちゃんの舞台に上がらない覚悟だとか。そういったセンシティブなところまで踏み込んで描く作風は、個人的にはかなり好みだったのですけど、かつて河下水希の『初恋限定。』という傑作すらも簡単に打ち切られてしまった過去があるわけで。
あざとくわざとらしいまでのエロを仕込んで頑張っていましたが、結果的に少女漫画というよりも泣きゲーっぽい作風はあまり支持されず、この手のテーマを「ジャンプ」でやるのは難しい、と改めて認識させられることになってしまいました。
幽体離脱編を終えて新章突入に際していろいろバラまいたところで打ち切りになってしまったのもマズかった。まとまりの面ではそれなりに畳まれているものの、まくらの幽体離脱のこの作品最大のポイントであり、ウリでもあったわけですし、そう考えると新章は何に向かっているのかいまいちわからなかったです。
いっそのこと全2巻で終わらせちゃった方が、作品的には綺麗だったのかなぁ、と思わなくもありません。
雪姫先輩に告白されてからの計佑の行動も宜しくなかったです。とにかく、ね。主人公の鈍感設定もほどほどにしないと、不自然な上に読み手にフラストレーションを与えます。誰がどう見ても告白されているにも関わらず、なんとなくな勘違いでなあなあに流したまま現状維持は非道いでしょう。雪姫先輩の心情を想うと、読んでいて胸が痛みます。
ハッピーエンドではあっても苦味の残るラストも好き嫌いが分かれそう。このリアリティあるドライな冷たさは、私はあまり得意ではないです。得たものは大きいけれど、失ったものも大きすぎる。
綺麗ごとじゃ済まされないと言われればそれまでですが。しかしこのラストで、作者さんの本気度は十二分に伝わりました。
今度は「ジャンプ」本誌以外の環境でお目に掛かりたいですね。次回作、期待しています。
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