2012.11/14 [Wed]
西澤保彦『幻想即興曲 響季姉妹探偵 ショパン篇』
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★★★☆☆
この原稿は、『幻想即興曲』と題された小説は、古結さんにとって、生涯の宝物
……ううん、そんな言葉じゃ語り尽くせない、彼女の命そのもの
――いいえ、命よりもたいせつなものかもしれない
ピアノ教師の野田美奈子が、夫の刺殺容疑で逮捕された。しかし、小学生の古結麻里は、事件当時に別の場所でピアノを弾く美奈子を目撃していたのだ。成長した麻里は事件をモデルとした小説を書き上げるが……。事件から40年後にその原稿を受け取った編集者の姉・響季智香子(28)は、新進ピアニストの妹・永依子(25)とともに真相を推理する。あのとき「幻想即興曲」を弾いていたのは誰だったのか。真犯人は?
「響季姉妹探偵」第1作。
編集者の姉とピアニストの妹が主役――かと思ったら、物語の大半は40年前に起こった殺人事件の際に、不可解な状況に居合わせた少女の半生を描いた作中作で占められており、実質的にはそちらが主人公。子供の頃のちょっとした選択が彼女の人生を大きく変え、数奇な運命に翻弄されることになる。
単なる本格ミステリだというだけでなく、小学生時代から作家となった現在までの麻里の40年を追体験する物語になっているため、ドラマ部分でもかなりの「読んだ感」を得られる作品です。全体に漂う昭和の空気も驚くほど違和感なく、それこそ仁木悦子の「仁木兄妹」シリーズと比較しても大差ないくらいです。
勿体なく思ったのは、「ショパン篇」と銘打って音楽を全面に押し出しているわりに、謎解きに関してショパン要素が薄かったことでしょうか。ショパンの「幻想即興曲」の来歴と物語そのものを重ねるという構図、表現したいものは凄くよくわかるのですが、この事件がショパンでなければならなかった必然性がいま一歩足りていない。モチーフで終わらせずに、テーマと呼べるレベルにまで引き上げていてくれると尚、良かったです。
余談ながら、智香子にCVを付けるなら斎藤千和に30票。絶対に合う。いや、むしろそれ以外にはあり得ないですね。
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