2012.10/08 [Mon]
西尾維新『めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川 小説版(上) 水槽に蠢く脳だらけ』
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★★★★☆
いやいや、間違った理論でも、
話の持っていきかた次第では、あっけなく正論を打ち崩せたりするものなのさ。
僕はずっと、そうやって生きてきた。無理を通して道理を引っ込めてきた
混沌よりも這い寄るマイナス球磨川禊。「水槽学園」の生徒会長に就任して間もない頃に起きたとある出来事。それは何の前ぶれもなく訪れたのであった……。この物語は彼が「箱庭学園」に転校してくる少し前の物語である。
「小説版 めだかボックス」第2作。
この秋からのアニメ第二期放送開始に際して、まさかのノベライズ第2シリーズが刊行。主役はなんと球磨川です。
時系列は球磨川が箱庭学園に転校してくる少し前、読み切り番外編「グッドルーザー球磨川」の続きのエピソードになります。球磨川禊といえば『めだかボックス』の裏の主人公といっても良いほどの人気キャラ。必ず負けることが運命づけられている存在でありながら、敵に回すと究極に厄介で、それでいてこれほどまでに安心できる助っ人もいないと思わせる頼もしさと、愛すべき頼りなさ。
良い感じにウザくて、良い感じにキモくて、良い感じに可愛くて――。そんな球磨川禊と『めだかボックス』本編にもゲスト出演した凶悪顔の少女・須木奈佐木咲が、安心院さんの仕向けた端末たちが出す課題に挑む、というのが本書のストーリーです。
収録されているのはロシアンルーレットの攻略法を探る「球磨川禊の弾丸を込めた贈り物」と、プールの底に刺さった“勇者の剣”を引き抜く「球磨川禊のただならぬ温度差」の2ステージ。のらりくらりと論点を躱しつつ、擬似論理と詭弁を重ねて最終的に読者を納得させられる回答を提示してみせるスタイルは、箱庭学園の教師から黒神めだかの存在を見つめ直した前作よりも遥かに本編寄り。
しつこくなりすぎない適度なメタネタと雑談、ボケとツッコミも本題を邪魔しない程度で非常に読みやすい。須木奈佐木さんの一人称も思った以上に普通の女子生徒していますね。
異能バトルに本格ミステリのハウダニット的手法を持ち込んだ『刀語』と比較すると、解決編までの間に充分な伏線が張られておらず、「日常の謎」と称するところまでには至っていませんが、相手の意表を突いて螺子伏せるコンゲームとしては申し分なし。
とはいえ、今回はらしくなく完全勝利。下巻ではコミックス15巻の「赤黒七並べ」ばりにぞくりとくる『また勝てなかった』を期待しています。
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