2012.09/13 [Thu]
川瀬七緒『147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官』
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★★★☆☆
とにかくね、歯痒くてしょうがないの。
未だに虫の声が聞こえない自分は、きっと聞こうとしてないだけだと思うから
全焼したアパートから1体の焼死体が発見され、放火殺人事件として捜査が開始された。遺体は焼け焦げ炭化して、解剖に回されることに。その過程で、意外な事実が判明する。被害者の腹腔から大量の蠅の幼虫が発見されたのだ。しかも一部は生きた状態で。混乱する現場の署員たちの間に、さらに衝撃が走る。手がかりに「虫」が発見されたせいか、法医昆虫学が捜査に導入されることになる。法医昆虫学はアメリカでは導入済みだが、日本では始めての試み。赤堀涼子という学者が早速紹介され、一課の岩楯警部補と鰐川は昆虫学の力を存分に知らされるのだった。
『よろずのことに気をつけよ』で第57回 江戸川乱歩賞を受賞した著者のデビュー第2作。題材が海外ドラマの『CSI:』っぽいとの話を聞いて読んでみました。
被害者の体内から出てきた球状に集まった巨大なウジの塊。通常のシチュエーションではありえない状況の中、法医昆虫学者の赤堀が招聘され、現場に残された昆虫の痕跡から事件へアプローチを掛ける。赤堀のキャラクターが年齢のわりには若すぎる気もしますが、それはともかく微細な証拠から事件の全体像に迫っていく過程は確かに『CSI:』っぽい。鑑識モノとでもいうのでしょうか。
ジャンル的にはいわゆる本格ミステリではなく警察小説なので、謎解き的な面白さはあまりありません。犯人にしても読み手が推理して到達できる類のものでもない。しかしながら、赤堀の捜査がやがて真相に辿り着き、真犯人の居場所から発見現場への道すじが、振り返ってみると巨大ウジ発生までの経緯と綺麗に合致して一本の線を描くところは美しさすら感じさせます。
昆虫と殺人事件というふたつの要素が見事なまでにオーバラップしており、これぞ「法医昆虫学捜査官」と唸らされること請け合いの構成です。
ウジやらバッタやらハチの幼虫やらがウヨウヨ登場するため好き嫌いが分かれそうだとはいえ、題材が昆虫なだけに研究室に籠っているよりもフィールドワークで動き回っている場面の方が多く、存外アクティブなこともあって意外とドラマ化向けな作品なんじゃないかしら。
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