2012.09/09 [Sun]
古野まほろ『復活:ポロネーズ 第五十六番』
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★★★☆☆
未知のウイルス、感染爆発、民族滅亡の危機、そして超大国による、占領――ディストピアに残された、最後の希望とは? 日本の独立が失われて既に十年。劣等民族としての日本人には、もはや抵抗する力がなかった。ある不思議な数列と、『涙の雫』なるものを除いて―――そして今、運命に選ばれた高校生が旅立つ。未来の鍵となるふたりがディストピアと化した祖国をさまよう果てに見るものは。
気付けば、今月になってまだひとつも読書感想を載せていなかった始末。仮にも書評ブログとして申し訳ないです。
古野まほろの最新作はなんと非ミステリのエンタメ小説。インタビューなどを読む限り本格探偵小説以外を書くつもりはないものだと思っていただけに、これには驚きました。
そうはいいつつ、モーリーの正体について考えを巡らせる際の整然として論理、「ヒトとヒトはわかりあえるのか」というテーマ、周到に仕込まれた伏線を怒涛のように回収していく様、どこ切ってもまほろらしく、まほろ以外の何ものでもない作品になっているところはさすがです。
まほろのミステリに対する姿勢や想いが窺える箇所もあり、古野まほろという作家性が色濃く反映されているのも注目したいポイント。非ミステリといえど、既刊のどの作品よりもデビュー作である『天帝のはしたなき果実』に近い雰囲気を備えた小説であることは間違いありません。
ところで本作の登場人物が語り手が古野昴、ヒロインが修野茉莉、その学友に渡辺夕佳、柏木照穂と一部スターシステムが用いられているのですが、これが読者(特にまほろ既読者)にしてみるとかなりの混乱を来す。これまでのまほろ作品はどの作品も世界観が同一だったわけで、明らかにそれらとは相反する周辺状況を設定している本作は、どういった立ち位置にあるのかが始終気になってしまいました。
最後まで読み終えると一応の説明付けは為されるのですが、これがまたせっかくの物語をぶち壊しているというか。ぶっちゃけた話、ファンが書いた同人小説を読んでいるような気にさせられてあまり宜しくない。
今回は素直に新規キャラ、新規主人公で良かったような気がします。
“稲矢実香”って明らかに峰葉さんのことなのだけど、「探偵小説」シリーズであかねんの亡くなった友人の名前とも一緒だし、作者の中ではこのふたりは同一人物なの? 『絶海ジェイル』に出てきた松浦るいかとコモの関係は?とか、まほろ作品はネーミング関係でよくわからないことが多すぎる。
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