2012.08/30 [Thu]
アントニイ・バークリー『第二の銃声』
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★★★★☆
高名な探偵作家ヒルヤードの邸で、ゲストを招いて行われた推理劇。だが、被害者役を演じるスコット=デイヴィスは、二発の銃声ののち本物の死体となって発見された。事件発生時の状況から殺人の嫌疑を掛けられたピンカートンは、素人探偵シェリンガムに助けを求める。二転三転する証言から最後に見出された驚愕の真相とは。
「ロジャー・シェリンガム」第6作。
やっぱりバークリーは面白い。謎解きの面白さもさることながら、なんといってもそのユーモアセンスが素晴らしいです。ページを捲ってまず最初に目に入るところに本書の簡単なあらすじが載っているのですが、改めて眺めてみると物凄い言いようですよね。「被害者はその女癖の悪さと傍若無人な態度から、招待客のほぼ全員から死を願われていた」って。これが読んでいると本当に嫌なヤツなのです。それなのに全体に漂う雰囲気は決してドロドロしたものではなく、むしろコミカルですらある。
正統派なミステリでは絶対にやらないようなオチが待ち構えているのにも関わらず、読後感は極めて爽やか。あまつさえ「被害者ざまぁ」的な感想すら抱いてしまうニヤニヤ感が堪りません。
また、本作で試みられている趣向はミステリ史にその名を刻む某有名作と同じものなのですが、作中でとある状況設定を行ったことで、元ネタが敢えて回避した部分をかなりストレートに描写してみせた点にも注目です。ここまでやっていて読者に気付かせないテクニックには恐れ入ります。
キャラクターの魅力もたっぷりで、偏狭な語り部・ピンキーとお転婆娘・アーモレルとのラブコメとしても楽しめます。いまから80年も前のイギリスで既にツンデレの概念が確立されていたのには驚きでした。
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