2012.08/12 [Sun]
映画『ミッション:8ミニッツ』
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★★★★★
分かってる。量子力学だろ? 君は間違ってる。でも間違ってる。
乗客全員死亡のシカゴ列車爆破事件。次なる巨大爆破テロの予告を受け、始動した政府の極秘ミッション。それは、「乗客の死の〈8分前〉の意識に潜入し、犯人を割り出せ」というもの。任務を遂行するのは米軍エリート、コルター・スティーヴンス大尉。タイムリミットは8分。爆破の瞬間にコルターの意識は自分に戻る。意識だけが他人と自分の肉体を行き来し、そして繰り返される次の〈8分間〉。少しずつ犯人に近づいていくコルター。だが、そのミッションには〈禁断の真実〉が隠されていた……。
リリース時にDVDの雑誌であらすじを読んで面白そうだったので借りてみました。ジャンルとしてはループもののSFサスペンスで、わけもわからぬままに秘密任務を与えられたコルターが被害者が死ぬ直前8分間の記憶を再現した並行世界へと送り込まれ、既に起きてしまった事件の犯人を探し当てるというストーリー。なのですが、これが当初想像していたような内容とはまったく違って、思った以上に心に訴え掛けてくるしっとりとした感動ものでした。
かといって、SFやサスペンスの面白さが欠けていることはまるでなく。爆弾魔が誰でコルターは時間内に爆破を止められるのかというサスペンスものの緊迫感、なぜコルターが任務につかされているのか、指示を与える彼女らは何者なのかというミステリー部分。さらには死を前にした人間が残された時間をどう過ごすのかというヒューマンドラマ、さらにいえばコルターを巡る事情に見え隠れするある社会派要素への問題提起。これらすべてがたった1時間半の映画の中にすべて詰め込まれていて、尚且つどれも中途半端にならずに相応の求心力を備えています。
劇中で説明される並行世界という概念も、初めはどちらかといえば仮想世界なんじゃ?と疑問を覚えていたのですが、中盤から終盤に掛けての展開で見事にこれが並行世界ものだったと思わせてくれます。しかも、この並行世界設定がドラマの根幹で重要すぎる役割を果たし、最終的にはSF的多重構造に落とすことで魅せてくれる。この構造がまた物語に多層的な奥行きを与えているんですね。
演出のセンスも光っています。ラスト近くでコルターが銀色のオブジェに映る自分たちの姿を眺める場面があるのですが、これはまさしく鏡の向こう側にはもうひとつのセカイが無限に広がっているという比喩表現に外なりません。人生の終わり、カウントがゼロになった瞬間にすべての時間を止めてしまう場面も、二次元ではなく三次元的な立体感ある表現で、それこそセカイそのものがストップしてしまったような印象を受けます。これだけでも既に完成され切っているというのに、そこからさらに物語がここで終わってしまうのか、或いは続きがあるのかと観る側の興味を次へ次へと掻き立てるようなつくりになっているのです。
これは本当に自分の目で確かめて欲しい。試しに1時間半を捧げてみても損はない作品だと断言しておきます。
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