2012.08/03 [Fri]
ティモシイ・ザーン『スター・ウォーズ 生存者の探索(上)』
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★★★☆☆
いつも言ってるでしょ、あなたやハンみたいなむさくるしいヒーローには会ったことがない、って
新共和国と帝国が和平協定を締結してから約3年。ルークとマラのもとに、クローン大戦の数年前に5万人の人々を乗せて飛び立ったまま消息を絶った外宇宙探査船アウトバウンド・フライトが発見されたという知らせが届いた。探査船は未知領域でスローンに撃墜されたと言われていた。悲劇の探険隊に何が起きたのか知るため、墜落した廃船に足を踏み入れた調査団のまえにひとりの少女が現れた。
「ハンド・オブ・スローン二部作」の3年後を舞台にしたノンシリーズもののスピンオフ小説です。著者はスピンオフの立役者、ティモシイ・ザーン。私は竹書房時代のスピンオフは丸々未読、「ハンド・オブ・スローン」も『過去の亡霊』しか持っていないので、ザーン作品はその『過去の亡霊』、『外宇宙航行計画』、『忠誠』(「スター・ウォーズ」以外なら『ターミネーター4 廃墟から』も読みましたが)に続いて4作目。
本作は「ジェダイ・クエスト」直前に起こったとされるアウトバウンド・フライト撃墜事件の真相に、結婚したばかりのルークとマラ、ハンド帝国のスローン信奉者、チスにジェルーンにジンズラー大使といった出自も思惑も異なる混成調査隊が追るというストーリーです。これを読むとザーン作品はSWユニバースの中に“ザーンSW”を作っていると言われているのもよくわかります。旧共和国時代の『外宇宙航行計画』に始まり、「アウトバウンド・フライト」、「ハンド・オブ・ジャッジメント」、「スローン三部作」、「ハンド・オブ・スローン」とすべてがひとつの線の上に成り立っている。おそらくは、フェル中佐が述べていたスローンがハンド帝国に連れてきたストーム・トルーパーたちというのが『忠誠』のラローンたちハンド・オブ・ジャッジメントの5人なのでしょう。
また、今回はかつて皇帝の手として数々の暗殺任務をこなし、現在はルークと結婚してジェダイとなったマラの心境にも大きなウェイトが置かれており、かつて罪を犯した自分がひとり生き残っていることへの疑問、帝国時代のやり方を懐かしむ心への戸惑いが語られています。そうした面ではハンと結婚し、スカイウォーカーの血筋を残すことに迷いを見せるレイアの姿を描いた『タトゥイーン・ゴースト』のマラ版といえるかもしれません。
その点、ルークはさすがの貫禄ですね。マラにはむさくるしいヒーロー扱いされていますが、ヨーダに聞かされた“ジェダイは結婚してはならない”という掟について思うところがありつつも、浮かない様子のマラを優しく支え、気難しいチスたち相手にも熱くならずに、冷静に対話を重ねる。なんという包容力! 『忠誠』や『ルーク・スカイウォーカー伝』の頃の田舎青年とは大違い。誰が見ても、もう立派なジェダイ・マスターです。
格式を重んじ、ジェダイや外の世界にも理解を示すチスのフォーンビも魅力的なキャラクターでした。下巻では、人間ギライのドラスク将軍も段々と歩み寄っていく展開になるのかな。何気に、サスペンス的な部分よりも人間関係の方に吸引力がある作品です。
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