fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

清涼院流水『探偵儀式 THE NOVEL メフィスト症事件』

探偵儀式 THE NOVEL  メフィスト症事件 (角川コミックス・エース)探偵儀式 THE NOVEL メフィスト症事件 (角川コミックス・エース)
清涼院 流水

角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-07-25
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★☆☆
坊主たちは、ルーシー・モノストーンって名前を知ってるか?
国民総探偵制度により、すべての国民が探偵化し、JDC(日本探偵倶楽部)も輝きを失った日本――。
最後のミステリ作家・N月R太郎の『百密室』という作品を読んだ者だけが、悪魔に取り憑かれたように人を殺し続ける“メフィスト症候群”を発症してしまう謎の事件が13年前から続いていた。
首つり探偵・伽藍堂天晴とBDC(ボランティア探偵倶楽部)のメンバーは、警視庁の笹山らの協力を得て事件の真相に迫るうちに、数十年前のカルト歌手ルーシー・モノストーンの影と、世界そのものを揺るがす秘密に辿りついてしまうのだった……!?


待望のJDCシリーズ新作!
――と、いうことでオーケーですか?コミックの方は完全に既存のJDCシリーズとは別物だけど、このノベライズでは『カーニバル』が史実を記した小説として登場するし、『彩紋家事件』とは逆に、遥か未来のJDC世界の物語ということで。
 清涼院はJDCシリーズの続き“双子連続消去”は「この人とならやれる!という編集者と出会わない限りは書かない」と言っているだけに、こういうカタチで新作を拝めることになるとは……なんとも嬉しいサプライズです。

 さて中身ですが、相変わらずぶっ飛んでいるというか――“24探偵”はまだセーフだとして、“Lの世界探偵”とか、“赤タン先生”に“Z解”とか、もはや自分でも寒いと思ってやってるでしょ、としか言いようのないくらいに酷い(誉め言葉
 “(笑)”が出てきたときには思わず「“(笑)”キター!!」となっちゃいましたよ。当時、龍宮が“(笑)”を使ったときには本当に衝撃を受けましたからね。小説で!?みたいな。

 メフィスト症事件に関する小ネタも面白かったです。第2回の流水はストレートで、第3回があからさまに「六とん」だったりして、第1回に「すべてがFになる」要素がないなと思っていたら、事件現場が“森”だったんですね。納得。
 第12回はいかにも「本格」な――霧に包まれた館での100人殺しだったのか?とか第23回や第35回はどんな状況だったんだろう?とか、ついつい考えてしまいました。
 いや、清涼院、本気でこのネタでシリーズを書いてみたらどうなんでしょう?『新本格もどき』みたいに。

 そんなくだらない(これも誉め言葉)ネタのオンパレードで出来ているのですが、それでも読んでしまう、読ませてしまうのが流水クオリティなんですよね。

(以下、ネタバレ)


 言ってしまえば「夢オチ」なのですが、一筋縄でいかないのは“JDCの世界”が確実に存在していることを我々読者は知っているわけだから、それが“伽藍堂天晴の作り出した世界”であるとは断言できないんですよね。じゃあ、あの世界の出来事=今までのシリーズは全て偽者だったのか?と問われれば、「はい」とは答え難い。そんなの空し過ぎるじゃないですか
(それでも清涼院ならやりかねないですけどw)

 現実の伽藍堂天晴が生きる世界は限りなく“私たちの生きる世界”に近いです。むしろ、私たちが生きている世界といっても良いかもしれません。だからこそ、最後の「告白」が生きてくるわけですし。
 もちろん、目覚めた伽藍堂天晴がいる世界もまた“JDCの世界”である可能性も否定できません。つまり“BDCの世界”のみが天晴の想像であった可能性ですね。しかしながら、清涼院流水=大塚英志という説を提示する以上、この可能性は限りなく低いと思われます。前述のとおり、目覚めた天晴の生きる世界が限りなく“私たちの生きる世界”に近いからこそ、生きるラストなわけで、そう考えると“JDCの世界”=“BDCの世界”の伽藍堂天晴が悪魔メフィスト=ルーシー・モノストーンに惑わされて迷い込んだのが目覚めた天晴の世界というのが合理的かな。すなわち、天晴は現実の引き戻されたように見えて、実は化かされて未だ夢の中、という解釈。
 それもまた、夢オチか。

 ふざけているようにみえて清涼院、こうやってさんざん読者を考えさせるんだから、やっぱり面白いなぁと思う今日この頃です。

 あ、メフィスト症事件に関しては一応の解決が見られますが、「反則」とかいう以前にそれはアリなのか?という感じですね。まあ人外の悪魔の所業なので仕方がないですけど。


流水御大、“双子連続消去”はなるべく早めにお願いしますよ。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

02 | 2023/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析