2012.07/16 [Mon]
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖(3) ~栞子さんと消えない絆~』
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★★★☆☆
万が一、あいつらに弱みを握られたら、ろくな目に遭わん……俺からの忠告だ
鎌倉の片隅にあるビブリア古書堂は、その佇まいに似合わず様々な客が訪れる。すっかり常連の賑やかなあの人や、困惑するような珍客も。人々は懐かしい本に想いを込める。それらは予期せぬ人と人の絆を表出させることも。美しき女店主は頁をめくるように、古書に秘められたその「言葉」を読みとっていく。彼女と無骨な青年店員が、その妙なる絆を目の当たりにしたとき思うのは?
「ビブリア古書堂の事件手帖」第3作。
昨年は島田荘司監修『本格ミステリー・ワールド2012』の「黄金の本格ミステリー」に選出されるなど、本格界隈からの注目度も高いシリーズの最新刊。
日常の謎モノとしては安定のクオリティで、第一話「ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)」はワトスン役の手記形式というミステリではお馴染みのフォーマットが目眩ましとして機能しており、何が起こっているのかを簡単には気付かせない巧妙さがあります。第三話「宮澤賢冶『春と修羅』(關根書店)」も伏線の張り方が上手く、真相が示された際に気付きの爽快感を味わえるハズです。
その一方、著者の三上さん自身がミステリ畑の作家ではないかせいか、推理自体には直接影響しないので後出しとまでは言いませんが、一部の情報が解決編になって初めて明かされるケースがあるのと、古書を扱う小説の宿命で題材となっている作品を知っているのといないのとでは、読者が謎解きを行う上で若干の有利不利を生じてしまう感があるのが瑕です。
また、これはライトノベル的な書き方なのかもしれませんが、全編が独立したミステリ短編というよりも、栞子さんの母親の謎をメインに据えた長編作品の1巻ぶんという印象が拭えないため、どうしても小粒に映ってしまうのが作品的にはネックな部分かもしれません。
各章のつながりをもう少し緩くあげても良い気がします。
今巻のサブタイトルはいかにも最終巻っぽいですけど、シリーズ自体はまだまだ続く模様。せっかく大ベストセラーにまで成長したコンテンツですし、本書がきっかけで再発掘される作品も出てきている現状を見るに、ノイタミナでのアニメ化か読者ハガキで再三煽っているドラマ化のいずれかがあるまでは、当分終わらないですよね?
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NoTitle
爽快でコミカルな部分もあるので、読後に得られる満足感と安心感は格別です。
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