2012.07/08 [Sun]
初野晴『千年ジュリエット』
![]() | 千年ジュリエット 初野 晴 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-03-31 売り上げランキング : 191185 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
「さようならの回数」って言葉を知っていますか?
ひとそれぞれにさようならをいえる回数が決められているそうなんです。
惜しくも普門館出場を逃したハルタとチカは、息つく暇もなく文化祭に突入した。だが、吹奏楽部、アメリカ民謡部、演劇部と次々に問題が持ち上がり……。
「ハルチカ」シリーズ 第4作。
発売日が告知される度に延期され、もはや出ないのではとさえ疑っていた『千年ジュリエット』も、ようやく刊行されてひと安心。今回は学園ミステリーの晴れ舞台、文化祭にてハルタとチカのコンビが事件解決に奔走します。語り部のチカや探偵役のハルタ、その他奇人変人揃いの登場人物たちのやりとりには、毎度のことながら笑わせられること必至です。
「ハルチカ」シリーズ最大の特色といえば、社会派青春ミステリともいうべき独自路線。本作においてもそれは健在で、障害を抱えて夢を追うこと、引きこもりの子を持つ父親の話、余命幾ばくもないジュリエットの秘書たちと通常の日常の謎モノで扱うには少しばかり重たげなテーマを掲げています。それでいて後味の悪さを残さず、決して甘い結末ではないけれど、そこに希望を見出し、暖かな気持ちにさせてくれるストーリーテリングが初野作品の良いところです。
収録作のうち最も好みだったのは「失踪ヘビーロッカー」。ステージの開演時間が迫る中、一度はタクシーで学校に辿り着いたアメ民部長がなぜ降車せずに引き返したのかという謎を、逆説的に解いてゆくのが面白かったです。
「決闘遊戯」は“未完で終わっている物語の合理的な結末を考える”日常の謎の定型パターンですが、解答がシンプルなぶん拍子抜け度も高いのが難点かもしれません。同じく本年度の結末推理系だと、市井豊『聴き屋の芸術学部祭』所収の「からくりツィスカの余命」に軍配でしょうか。
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NoTitle
主役の二人のやりとりが好きな私としては二人のメインの話が少なめで少し残念でした。
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