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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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望月守宮『無貌伝 ~綺譚会の惨劇~』

無貌伝 ~綺譚会の惨劇~ (講談社ノベルス)無貌伝 ~綺譚会の惨劇~ (講談社ノベルス)
望月 守宮

講談社 2011-08-04
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★★★★☆
探偵とはそういうものだ。訳知り顔で語るのを罪というなら、お前も助手なんてやめるんだな。
探偵見習いの望は、名探偵・御堂八雲に呼び出され、怪事件について語り合う談話会――綺譚会に参加することに。そこで紡がれる物語は、夢幻の顔を持つ怪盗・無貌と彼の協力者たちに纏わる、恐怖と悲哀の歴史だった。豪華列車の中に煌めく、八雲の真意と探偵たちの矜恃。明かされる綺譚の謎と、連鎖する望の宿命……。動き出す運命の歯車に導かれた終着駅は!?


「無貌伝」第4作。
 シリーズ初の連作短編形式――ということで良いのかな。参加者が列車の中でそれぞれに関わりのある過去の事件を語り合うという百物語的な集まりが行われ、それらの話が現在の望の物語として一本の長編にまとめ上げるスタイルの一作です。
 全部で7本ある綺譚会の各エピソードは、人外の介在しないオーソドックスな雪密室あり、江戸川乱歩ちっくな倒錯的犯罪者の物語あり、横溝風な寒村・民俗モノにヒトデナシの存在を溶け込ませた作品ありと、ミステリに囚われずバラエティに富んだ内容になっており、まるで『世にも奇妙な物語』です。

 興味深いのは、時系列も舞台も雰囲気もてんでバラバラな物語をいくつも集めたことによって、この一冊だけで「無貌伝」の世界観をかなりの深みを与え、見事に掘り下げてみせたところです。
 この特殊な構成を採用したことで、シリーズのエピソード0を描いた前作『人形姫の産声』の後日談と、本筋である現代編の続きを同時並行で不自然なく両立させしまった技量にも恐れ入ります。

 しかも、ここにきて物語が大きく動き出す。完全にクリフハンガーの中継ぎ話なのに、ここまで読者を惹きつけるってどういうことなの。ヒトデナシの特殊設定を利用したミステリとして秀作だった前巻から一変して、今作は本格と呼ぶにはミステリ要素が弱すぎる。弱すぎるのは確かなのですが、ひとつの読み物、シリーズ物としては圧倒的なまでに面白い。
 レトロな香り漂う探偵大河活劇譚という意味では、山口芳宏の「大冒険」シリーズあたりが好きな人にはかなり合うと思います。1巻目の『双児の子ら』から、ぜひどうぞ。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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