2012.06/20 [Wed]
嶋田隆司(ゆでたまご)『火事場の仕事力』
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★★★★☆
要するにボクは、老いたネプチューンマンのあの迷走ぶりは、実はボクの迷走ぶりでもあったわけです。
「究極の超人タッグ編」で、ボク自身もまた彼同様、
何をやれば正解なのか、ちょっと見えなくなっていたところがあったんです。
長引く不況により日本全体を覆う重苦しい空気に包まれる日本。本書では、超人気漫画『キン肉マン』の原作者・ゆでたまごの嶋田隆司が、さまざまなメディアミックス、リバイバルブームのけん引、ツイッターによる情報発信など、型にとらわれないその独自の仕事術を余すことなく披露し、“キン肉マン世代”にアツいエールを贈る! もちろん『キン肉マン』の裏話も満載! こんな時代でも「へのつっぱりはいらんですよ!」
“働かない方のゆで”でお馴染み、マンガ家・ゆでたまごのシナリオ担当・嶋田隆司によるエッセイ本。ビジネス書やハウツー本というよりは、ゆでたまごの創作術を綴ったといった感じです。
今週掲載ぶんの新章『キン肉マン』では、どんな技のかけ方も学習してしまう急成長型完璧超人ピーク・アブーを倒すための手段として、キン肉マンが超人プロレス的フェイバリットから基礎技重視の攻撃へと移行し、なんと原作ではジェシー・メイビア戦のみでしか登場していなかった48の殺人技「風林火山」を決め技に用いるという、肉ファン感涙の展開が用意されています。
兎にも角にも、現在連載中の新章『キン肉マン』は毎週毎週、神がかって面白い。web連載の『キン肉マン』とマガジン連載の『AKB49 ~恋愛禁止条例~』が現在連載されているマンガでは圧倒的二強ですね。
で、ファンとしてなんといっても気になるのは、あのグダグダだった『Ⅱ世 究極の超人タッグ編』から、どんな心境変化があっていまの新章『キン肉マン』が生まれたのかという、その過程に尽きます。私は『Ⅱ世』世代なので正直なところ『初代』よりも『Ⅱ世』に愛着のある人間です。なのでこの新章を褒めているのは別段、懐古精神からきているわけではありません。そんな私でも『究極タッグ編』のダメっぷりは擁護できなかったし、現行作はびくりするほどの面白さなのです。
本書を読んでみると、『初代』を復活させるまでの経緯、『究極タッグ編』で失敗した理由が明確に語られており、これはまさにファン必携といえるでしょう。
作者自身、どのキャラを立てれば良いか悩んだし、だからこその迷走だったんですね。『究極タッグ編』でのネプチューマンの意味不明さ、マシンガンズVSマッスルブラザーズ・ヌーヴォーの消化不良感、それらすべての敗因をきちんと見つめ直した上で描かれているのだから、そりゃあ、いまのシリーズがつまらないわけがないです。
だからといって『Ⅱ世』での失敗をなかったことにせず、あの失敗があったからこそいまこの作品を提供できている、というゆで御大の姿勢は素晴らしいものがあります。
それと「直感系のインパクト~」の項で若干触れられていますが、ゆで御大の真骨頂はその天然性ですよね。最近ではブラックホールの「悪魔をなめるな!」が漢字書きだったり、あのポージングでなければここまで笑えなかっただろうし、ダルメシマンの「完璧な犬なのだーっ!」なんてセリフやクラッシュマン戦の「ピュー」も狙ってやっているわけじゃないのに、奇跡的に面白いのです。
これが一度や二度ならばともかく、毎回必ず2~3個はこういったおもしろワードが潜んでいるところがすごい。ファンもファンでそれをけなすのではなく、作風として受け入れているところがまた奇跡的。まさに三人目のゆでたまごです。
肉ファンであれば読んで後悔はなし、いやむしろ有無を言わさず読んでおくべき一冊です。
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