2012.06/09 [Sat]
法月綸太郎『キングを探せ』
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★★★★☆
それはちょっと
なんか安いコントみたいだしさ。せめてプロジェクトの成功、ぐらいにしといた方が
奇妙なニックネームで呼び合う4人の男たち。なんの縁もなかった彼らの共通項は“殺意”。どうしても殺したい相手がいる、それだけで結託した彼らは、交換殺人を目論む。誰が誰のターゲットを殺すのか。それを決めるのはたった4枚のカード。粛々と進められる計画に、法月警視と綸太郎のコンビが挑む。
「法月綸太郎」シリーズ 第12作。
実はこれが初法月。基本的にシリーズものは第1作から読んでいかないと気が済まないタチなので、大御所であればあるほど既刊の冊数が多くなって読めないというジレンマに陥ってしまうのが欠点でした。しかしながら、本作は今年度本ミス大本命と噂に名高いこともあり、これは押さえておかなくては、と一念発起した次第であります。以上、背景説明終わり。
本作では倒叙もののスタイルを採っており、法月警視と息子の推理作家・綸太郎コンビがそれに挑む形で物語が進行します。このあたりのキャラ配置はそのまんまエラリー・クイーンの「国名シリーズ」ですね。
犯人たちは四重交換殺人を実行しようとしているだけあって、その方法もかなり念入りに練り込まれているのですが、緻密に計画された犯行に探偵役が噛んできたことで本来あるべき姿とはまったく別の様相を呈し、それが結果として新たな謎を生み、事件をより複雑化してしまうという構図が面白い。
また、解決編手前で唐突に挿入される図版によって「何じゃこりゃ?」と混乱させたかと思うと、続く次ページでの引用文にて読み手の目が点になるような決定的一打を加えてくるなど、真相披露までの持っていき方が抜群に上手いです。
そうして迎えた最後の最後、皮肉たっぷりのラスト一文を読んだ瞬間、完全に作者の掌の上で踊らされていたとわかってしまうこの構成。清々しいまでの完敗です。
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