2012.06/05 [Tue]
歌野晶午『魔王城殺人事件』
![]() | 魔王城殺人事件 (講談社ノベルス) 歌野 晶午 荒井 良二 講談社 2012-05-08 売り上げランキング : 491277 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
だが、それはそれ、これはこれだ。国語のテストが100点だったら、算数の15点がチャラになるのかい?
物事はきちんと分けて考えないといけない
星野台小学校5年1組の翔太たちは、探偵クラブ「51分署捜査1課」を結成した。いくつかの事件を解決し、ついに、町のはずれにある悪魔の巣窟のような屋敷、デオドロス城(僕たちが勝手に名付けた)にまつわる数々の怪しいウワサの真相を確かめるべく探険することに! 潜入直後、突然ゾンビ女(?)が現れたかと思うと、庭の小屋の中で謎の消失! 新たに女子2人が加わった「51分署捜査1課」は再び城に。今度は小屋の中で乳母車男(!?)の死体を発見してしまうのだが、その死体も消滅してしまう。やはりデオドロス城には何かただならぬ秘密が隠されているのだ。
先月発売ぶんの講談社ノベルス。実にミステリーランドからのノベルス落ちらしい小学生たちの冒険を描いたジュブナイルミステリです。廃墟探検に探偵ごっこ、女子と男子間の無駄な対抗意識など、わくわく要素がいっぱいで読んでいて童心に帰った気分になります。
メインとなる物理トリック自体は大掛かりながら、ミステリの難易度としてはそれほど高いものではありません。ある程度の数をこなしている大人のミステリ読みから見れば、速攻で見抜けてしまうかもしれない代物です。しかし、それで良い。それだから良いのです。
というのも、本作は始終子供目線で書かれています。それは登場人物の造形にしてもそうだし、出題される謎のレベルやストーリーにしてもそうです。そしてそんな土壌で勝負するからこそ、このトリックが初めて活きてくる。
つまり、この小説を読んで子供たちがまず何を感じるかって「理科や算数ってこんなに面白いんだ」ということだと思うんです。勉強なんて大して楽しくもないし、特に算数なんて大のニガテで何の役に立つのかもわからない――。そんな小学生諸君がこの本を手に取ったとき、自然と学校の勉強にも興味が沸いてくるような、自ら進んで面白さを見出せるような、そんな書き方がされているんですね。児童書として、これはすごく大切な要素です。
ミステリとの出逢いにしても勉強に向き合う姿勢にしても、子供たちに何かしら“目覚め”のきっかけを与えてくれるであろう秀逸な一冊でした。
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