2012.06/04 [Mon]
西尾維新『小説版 めだかボックス(下) 朳理知戯のおしとやかな面従または椋枝閾の杯盤狼藉マニフェスト』
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★★★★☆
なんていうか、真面目に相手をすれば真面目に相手をするほど、ペースに嵌まっていく感じといいますか
――現象で言えば、あいつの前では誰もが自滅していくというのが、僕の感じた事実です。
エピソード「第0箱」後編! 箱庭学園第98代生徒会選挙に出馬した黒神めだか。彼女の当選を阻止するため、箱庭学園教師陣が暗躍する。JC1巻へとつながる“めだか前日譚”が今、明らかに!!
「小説版 めだかボックス」下巻。
上巻同様、めまぐるしい展開だったり劇的なバトルアクションだったりというものからは掛け離れた内容で、あくまでも箱庭学園教師陣と生徒たちとの駆け引きがメインです。下巻からのキーパーソンとしては不知火半袖と意外や意外、大刀洗選挙管理委員長が登場。マンガ版ではあの球磨川でさえ震え上がらせる底知れなさを見せる大刀洗斬子さんだけあって、オールジョーカーばりの存在感を見せつけてくれます。敵に回すと怖ろしいとは、まさにこのことですね。
今巻で最も戦慄を覚えたのはミニコーナー「黒神めだかの私の尊敬すべき先生がた③」における「その生き方はロボット三原則的にいつかは破綻する。だから私が破綻させてあげておいた」の二文。何の悪びれもなく、平気でこういうことを言えてしまうあたりが、黒神めだかの“やばさ”です。
相も変わらず無自覚にナメきった態度で教師たちを精神的に追い詰め、善人面して徹底的に叩きのめす。しかしながら、何故かそれが結果的にめだかへの利という形で戻ってきてしまう。それが、どんな相手でも取り込んでしまうめだかの才であり、主人公たる素質なのです。ジャンプマンガの昨日の敵は今日の友的王道を西尾維新的なアプローチで攻めると、こういった解釈になっていくわけか。
マンガ本編が生徒会長・黒神めだかであることから始まっている以上、箱庭学園の教師たちに勝ち目がないことはわかっています。言うまでもなく、本作では上巻の久々原滅私、啝ノ浦さなぎに続いて朳理知戯もめだかの前にその価値観をぶち壊されることになり、椋枝閾に至っては闘う前に完全な敗北を喫します。
それでも、そんな化物じみた女子高生を、誰よりも敵視し、敵対していたハズの椋枝閾が大人として、ひとりの教師として、導いてやるシーンが素晴らしく良かったです。上巻で啝ノ浦さなぎがはぐらかしに「どんなに化物じみていても、ひとりの高校生には変わりない」というようなことを述べていましたが、まさしくそれが真理なんですよね。
見方によってはそれは教師たちが、めだかに取り込まれてしまったと見えなくもありませんが、むしろこれが本来あるべきカタチでしょう。『新本格魔法少女りすか』のキズタカなんかにも、こうした大人との対話が必要だと思うんだ。
最後の最後の良い場面で平戸ロイヤルネタを本当に入れてきた西尾維新、さすがっす! てか、めだかちゃんの前の席だったのか。
〆め方もなるほど、と感じさせるものがあり、“めだかボックス”の前日譚として、満足いく出来栄えのノベライズでした。
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