2012.05/20 [Sun]
長島槇子『吉原純情ありんす国』
![]() | 吉原純情ありんす国 (ハヤカワ・ミステリワールド) 長島 槇子 早川書房 2011-09-22 売り上げランキング : 526550 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
遊びはとことん遊ぶものです。中途半端はつまりません
めっぽう将棋が強くて玉の肌。利発で可愛い十五歳の“花魁見習い”おぼろは、将来最高の花魁になると誰もが太鼓判を押していた。が、彼女には困った趣味があった。「隠密ごっこ」と称し、廓の裏で起こる黒い事件に首を突っ込むのだ。ある花魁見習いが忽然と消失した謎、不可解な無理心中、腕の入れ墨を抉り取られた最高位の花魁の殺害……虚実入り混じる男と女の世界で、おぼろが明らかにする真相とは?
吉原の遊郭にまつわる事件を見習い遊女のおぼろが解き明かす連作時代小説。著者の長島槇子は、この他にも多くの遊郭モノを書いている作家さんだそうです。
遊女というと、誰よりも人の機微を読み取る能力に長け、男と女の駆け引きなんてお手の物なイメージがあり、本作においても男たちを手玉に取って上手いこと客商売をしていく遊女たちの姿が存分に描かれています。しかし、実はそんな彼女たちこそが誰よりも純情で、こと自らの色恋においては不器用そのものです。本書に収録されている事件の顛末はどれも切なく、なんとも哀しい物語でした。
ハヤカワ・ミステリワールドの叢書ではありますが、収録されている全3篇はどれも事件に対して謎解きらしい謎解きが行われず、なんとなく流れで解決してしまっているのでミステリ的な見どころはさほどありません。探偵役のおぼろがあまり活躍を見せず、最後の短編に至っては花魁・月都のキャラに完全に食われてしまっているのは、むしろさすがは花魁というべきでしょうか。
ただし、この点は必ずしもマイナスとは言い切れず、おぼろの探偵役としての不甲斐なさや至らなさ、力量のなさが、結果として彼女自身まだまだ見習いの発展途上であることを強調することにも繋がっていて、だからこそ“無垢でいられる時期”の終わりが近い将来やってくることにやりきれない思いを抱かせる。この漠然とした不安が、ラストでかなり寂寥感を誘ってきます。
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