2012.05/09 [Wed]
山形石雄『六花の勇者』
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★★★☆☆
勇者の数は六人。それ以上ということも、それ以下ということも、絶対にありえん
闇の底から『魔神』が目覚めるとき、運命の神は六人の勇者を選び出し、世界を救う力を授ける。地上最強を自称する少年アドレットは、その六人、『六花の勇者』に選ばれ、魔神復活を阻止するため、戦いへ向かう。だが、約束の地に集った勇者は、なぜか七人いた。その直後、霧幻結界が作動し、七人全員が森に閉じ込められてしまう。七人のうち誰かひとりが敵であることに気づいた勇者たちは疑心暗鬼に陥る。そして、その嫌疑がまっさきにかかったのはアドレットで――。
「六花の勇者」第1作。
7人の勇者の中にひとりだけ偽物が紛れている。さて、魔神の手先はいったい誰でしょう?というファンタジー土台のライトノベルミステリです。
解かれるべき命題は主にふたつ。ひとつは誰が偽物なのか、もうひとつは一種の密室状況からどんな手段で結界を作動させたのか、です。このうち後者は比較的早い段階で解答が示され、問題の主眼はその方法を証明する上で唯一の障壁となる、偽装工作の霧をどうやって発生させたのかへと移っていきます。
ハウダニットに関しては、ファンタジーの要素を活かしつつも、世界観の設定そのものが丸ごとミスリードとして機能しており、読者の目を巧妙に逸らさせることに成功しています。
反面、ハウダニットの解明が作品のメインであるフーダニットにまったく寄与していないため、トリックがわかったところで犯人探しはまた別のお話となってしまうのがミステリとしては辛いところ。7人目探しが基本的に心証頼りで、解決編の前までに出されている情報だけでは断定するところまで持っていけないのも痛いです。完全に後出しじゃんけんなので推理のしようがありません。
また、いざ犯人が明かされてみるとそれまでのページにアンフェアに見えなくもない際どい言動があったり、そもそも各〈聖者〉の能力で何ができるのか明確にされていない、六花の紋章をどうやって捏造したのかが不明など全体に説明不足な箇所も多く、トリックは良いのに脇が甘いのが難点です。ラストは安心のJホラーエンドで思わずにやりとしました。
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