2012.05/08 [Tue]
西尾維新『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』
![]() | 不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス) 西尾 維新 TAGRO 講談社 2008-12-05 売り上げランキング : 26356 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★☆☆☆
一、教師は聖職者である――ゆえに、人間であってはならない
平和だったはずの私立千載女学園で、不可思議かつ不可解な殺人事件が起こる。そしてそこに勤務していたのは、こともあろうか倫理教師となったあの串中弔士。病院坂迷路を巻き込んだ事件から14年。探偵ごっこの犯人捜しが再び始動。犯人は一体!?
「『きみとぼく』本格ミステリ」第4作。
これは酷かった。何がしたいのかわからない。西尾維新の著作の中では『偽物語』、『難民探偵』に並んでワースト3といって良いほどに出来が悪いです。
シリーズ第4弾となる今作は『不気味で素朴な囲われた世界』の串中弔士サイドの続編として、教師となった弔士と病院坂迷路の“バックアップ”が千載女学園教師連続殺害事件に挑みます。
しかし、これがミステリではないんですね。少なくとも本格ではない。何故なら、本作には解くべき謎が存在しないのです。
たとえばオビにも書かれているように、一連の殺人事件は見立てとして行われているのですが、それをオビで明かしている時点で既に隠されているわけではないし、作中で何の伏線もなく唐突に「七不思議の見立てが云々かんぬん~」と傍点を振ってきたところには唖然としました。
そもそも謎にするつもりがないのなら情報を開示するタイミングが遅すぎます。謎にするつもりならば、言わずもがなきちんと伏線を張らなくては意味がない。後出しも良いところです。
犯人についても具体的な言及があるわけでもなく、言ってしまえば任意の誰かで済ませてしまいます。フーダニットでもハウダニットでもホワイダニットでもなく、まるで素人の書いたミステリ風小説を読まされているかのよう。仮にもミステリ畑からデビューした作家が、こんななんちゃって作品を書いちゃダメでしょう。
なんでもかんでも某トリックを仕込んでおけば万事オーケーだと思っているのだとしたら、ちょっと読者をナメすぎています。「化物語」のシリーズにも言えることですが、速筆は結構だけれど、もう少し内容を練ってから出版すべきで、この時期(2008~2009年)の西尾作品は質より量の暗黒期といえるほどに質が低いです。
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