fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

マシュー・ストーヴァー 『スター・ウォーズ 破砕点(上)』

スター・ウォーズ 破砕点〈上巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)スター・ウォーズ 破砕点〈上巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)
マシュー ストーヴァー Matthew Stover

ソニーマガジンズ 2004-08
売り上げランキング : 653798

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★★☆
クローン大戦がなんだ? そんなもの、だれが気にする?
ハルウン・コルの者はだれひとり、
コルサントを支配してるひと握りのくそったれのことなんか、なんとも思っちゃいるもんか。
おれたちが分離主義者を殺すのは、やつらがバロワイに武器や物資を与えるからだ。

クローン大戦の戦火は銀河中に広がり、多くの惑星で内戦を誘発した。ジェダイ評議会の長老、メイス・ウィンドゥの故郷ハルウン・コルもそのひとつだ。独立星系連合に与した惑星政府に対抗するゲリラ組織を支援すべく、メイスは弟子のデパ・ビラバを送るが、彼女は消息を絶つ。やがてメイスのもとに、デパが関与したという一般市民虐殺の映像が届く。


「クローン大戦ノベル」第1作。
 表紙イラストからもわかるようにジェダイ・マスターのメイス・ウィンドゥが主役のスピンオフ小説です。日本のスピンオフ業界でスカイウォーカー一族と関係のないキャラクターにスポットを当てた作品が訳されることは本当に稀なケースですし、殆ど死に体同然という現在のSW小説を取り巻く状況を鑑みるに、今後もまずもってあり得ない。
 新三部作の公開に沸き立っていたあの当時だからこそ通った企画であり、いまになって振り返ると「クローン大戦ノベル」でバリス・オフィーの活躍篇である『Medstar』がスルーされたのは、やはり勿体なかった。

 本作は『EP2』の半年後の物語です。共和国の全ジェダイの中でも、ヨーダに次ぐNo.2の地位にあるマスター・ウィンドゥがかつての弟子で自身もまた評議会メンバーだったデパ・ビラバの行方を追って故郷の惑星を訪れます。
 そこで待っていたのは終わることない内乱と虐殺、目の前で喋っている最中の人間の腕が吹き飛ばされ、子供は大人を殺し、その子供をまた別の大人が殺す憎しみと暴力に溢れた世界。あのメイスですらも、滞在1週間で精神的にかなり追い詰められてしまうほどの現実。
 とにかく暗い、重い、陰惨、鬱々。こういった突っ込んだ描写ができるところがSW小説の素晴らしさではあるとはいえ、よくこれを日本で出せたよなぁ、といった感じです。世間一般に知られている「SW」像とはあまりにも掛け離れています。
 コルサントからでは見えない実情と、ジェダイの矜持とアイデンティティすらも揺さ振ってくる。メイスが現地の子供に「くそったれジェダイ」と罵られて衝撃を受けるなど、上巻読了のこの時点で既に、これまで読んだどのスピンオフよりも考えさせられる部分が多く、読み応えのある物語でした。

 私はこれまでマスター・ウィンドゥに対してぼんくらで堅物、保守的なイメージを抱いていましたが、実は、メイスは常にジェダイであることに迷い、自分の過去の行動について他にもっとやりようがあったのではないかと悔やみ続けているという姿が本作では描かれています。
 また、戦闘好きで激情家、怒りに左右されやすいなど、根っこの部分がアナキンとかなり似ていることもわかります。ただし、その感情を理性で抑え込めるか込めないかが両者の大きな違いであるわけで。だからこそ、任務をゲーム感覚で捉えるお調子者のアニーに厳しく当たっているのかもしれませんね。

長い絶望を抜けてとうとうデパと再会したところで上巻は終わり。近いうちに下巻も読みます。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

Trackback

トラックバック URL
»»この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【マシュー・ストーヴァー 『スター・ウォーズ 破砕点(上)』】

スター・ウォーズ 破砕点〈上巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫―Lucas books)マシュー ストーヴァー Matthew Stover ソニーマガジンズ 2004-08売り上げランキング : 543104Amazonで詳しく見る by G-Tools★★★★☆クローン大戦がなんだ? そんなもの、だれが気にする?ハル...

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

02 | 2023/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析