2012.04/29 [Sun]
西尾維新『小説版 めだかボックス(上) 久々原滅私の腑抜けた君臨または啝ノ浦さなぎの足蹴による投票』
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★★★☆☆
ご自身の経験則とそぐわない生き方をしている人間を見たら、誰しも不快になるものですよ
――多くの人間は失敗から学んで成長します。
だけど見る限り、黒神めだかは成功からしか学んでいない。
その自信たっぷりな態度は私達のような『個性』からは不快に見えるものですよ
箱庭学園教師陣VS完璧すぎる新入生・黒神めだか! 小説版ではじめて明かされる、めだかが生徒会長に登りつめる以前のエピソード「第0箱」を収録。さらに箱庭学園の教師たちが初登場という豪華な内容でお届け!!
『週刊少年ジャンプ』をこよなく愛する西尾維新が原作を手掛けるマンガ『めだかボックス』のノベライズです。もともとが西尾維新らいさ全開の作品なので、ノベライズも勿論、西尾維新自らが担当。5月2日発売とアナウンスされていたのですが、本屋に行ったら置いてあったので買ってきました。
『悲鳴伝』、『アニメ『化物語』副音声副読本(上)』、本作、とこの一週間だけで新刊が3作とか、さすがは計画殺人的執筆スケジュール。
その『悲鳴伝』と並行して読み進めていて改めて感じたのですが、昨年の『少女不十分』あたりから西尾維新の作風が明らかに変わってきています。本作においてもそれは同様で、一時のような会話劇至上主義的ながちゃがちゃした側面は成りを潜め、かなり真面目に“物語”していました。西尾維新=キャラの掛け合い、と見られることも多いのでこの方向性のシフトについては賛否両論あるかと思いますが、『偽物語』の雑談が本題の邪魔をしまくったあまりに酷い構成に憤りを覚えた自分としては大歓迎です。
箱庭学園の教師たちの初お目見えとなる本作は、本編の前日譚に当たる内容であると同時に、普段の魑魅魍魎跋扈する生徒間バトルの世界から一歩身を引いた、普通の大人たる教師陣からめだかを見つめることで、その異常性を再認識させられます。
やっていることはすべて理に適い、正しすぎる優等生・黒神めだか。しかし、どれをとっても模範的な生徒としか思えない彼女の言動は明らかに常軌を逸していて、不気味かつ怖ろしい。まさしく“化物女”と呼ばれるに相応しい決定的な異質が、そこにはあります。
初期の新本格作家の如く人間が描けてないとさんざん言われてきた西尾維新ですが、ことめだかに関していえばその行動の数々に人間味の入り込む余地がない。本編の「黒神めだかの後継者」編でも強調されてきたように、めだかは普通の人間足り得ない感情の欠落した存在なのです。少年マンガの主人公がここまでラスボスで良いのでしょうか。
そして選挙活動が始まる以前から体制の見直しに改革の下準備、首の挿げ替えと外堀を埋めるめだかを快く思わない人間は当然いるわけで。それが職員室に詰める教師たちです。
めだかが生徒会長になるに当たって、この欠落した部分を少しでも補うような何かをこの対峙によって得ることになるのかどうかがこの物語の焦点ですね。とりあえずは待て、下巻ということで。平戸ロイヤルの登場にも密かに期待しています。
カバー下の、善吉と不知火の“意外とよく聞く”出逢いのエピソードには和みました。良いなぁ、こういうの。
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