2009.08/05 [Wed]
水生大海『少女たちの羅針盤』
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★★★★☆
あの、『羅針盤』っていうのはどう?
短編ホラー映画主演女優としてロケ現場にやってきた舞利亜。そこで監督に意味ありげに言われる。「きみ、羅針盤にいた子だよね」と。舞利亜に忘れ去りたい過去が甦る。伝説の女子高生劇団「羅針盤」。監督はさらに言う。「一人、死んでるんだよね」
羅針盤はメンバーの死と共に活動を停止した。舞利亜が殺したのだった。監督はいったいどこまで知っているのか。疑心はふくらむ。
そして物語は四年前、羅針盤の誕生と死へ、と。
ぎゃーんっ!!
まったく。見事に騙されましたよ。あらすじの時点で既に巧妙な罠に掛かっているわけですね、私たちは。
誰だってそう思うじゃんよ!(いや、思わないじゃんといった方が正しいのかな?)
物語は過去に殺人を犯した舞利亜の一人称である現在パートと、『羅針盤』のメンバーが集まって劇団を立ち上げ、そしてメンバーのひとりが命を落として活動が終焉するまでの過去パートが交互に描かれるという構成をとっています。
ここで面白いのが、現代パートの“舞利亜”は芸名である上、整形までしているので、誰が殺人を犯したのかということがわからずに話が進んでいくところ。つまり、犯人は“舞利亜”に違いないのだけれど、その“舞利亜”が誰なのかがわからないんですね。上手いわぁ。
加えて、現在パートでは死んだメンバーの名前も明かされていないので、誰が犯人で誰が死んだのか、なぜ死んでしまったのか、、、まったくの謎。その謎がどんどん読ませていきます。
で、ラスト。それがとうとう明かされるわけですよ。
個人的に、これは霧舎学園の『九月』以来の衝撃かもしれないです(……『九月』はすごかった)
過去編は女の子4人の栄光と挫折の物語、といった感じで展開的にはちょっとテンプレですけど、キャラも立っていて面白かったです。
羅針盤は一度は座礁したけど、また新たな航海へと踏み出した。終わり方も限りなく前向きで、良かったです。
――犯人には目も向けられないですけどね。
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