2012.04/20 [Fri]
霧舎巧『十月は二人三脚の消去法推理 私立霧舎学園ミステリ白書』
![]() | 十月は二人三脚の消去法推理 私立霧舎学園ミステリ白書 (講談社ノベルス) 霧舎 巧 講談社 2007-06-08 売り上げランキング : 388703 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
ありがとう、ちょっと見直したよ
十月。霧舎学園の秋の行事第一弾は体育祭。琴葉と棚彦は体育祭実行委員に据えられる。準備の真っ最中の本番一週間前、校内で不審火が発生。パソコン教室のメールに残された「十月十日の殺人」との関連は? 昨夜子の言動が事件解決の糸口になるのか。学園ラブコメディーと本格ミステリーの二重奏、「霧舎が書かずに誰が書く!」“霧舎学園シリーズ”。十月のテーマは消去法。
「霧舎学園ミステリ白書」第7作。
7月にシリーズ最新作の発売を控えているということで積読消化。実はこの本、発売当時に買ったものなのでかれこれ5年も積読していたという……。霧舎が遅筆でどうのと文句を言えないくらいに自分も大概な読者です。
『金田一少年の事件簿』の後釜となるべく始まったこのシリーズ。主人公の琴葉と探偵役の棚彦が毎月“とあるテーマ”の事件に巻き込まれるというのが基本フォーマットで、『九月』という例外はあるものの、ミステリを初めて読む層を意識して各巻それぞれ200ページに満たないボリュームで統一を図っています。
しかし本作ではそれが丸っきり裏目に出てしまっている。ただでさえ講談社ノベルスの中でも特に薄い部類に入るシリーズなのに、ひとつの本の中であれもこれもと事件をやらかしすぎています。その結果、どの事件が「今月の事件」で読者がメインとして解くべき謎なのかがいまいちはっきりしないままで解決編に突入してしまう。これはミステリ小説としては非常にネックと言わざるを得ません。
下手にページ数を縛ったりせず素直に「《開かずの扉》研究会」レベルの分量にするか、或いは作中で起こる事件も一本に絞った方が断然読みやすい。そのあたりのアンバランスさがどうにも目立ってしまう作品でした。
著者ご自慢(?)の逆消去法推理についてもあまり上手に決まっているとは言い難く、読んでいてこれ消去法なのか?と首を傾げなくもないです。
それでも相変わらずおまけに隠された伏線は巧妙で、そこに潜んでいることがわかっているのに見破れない。今回もまんまとやられました。小説という形態をそのまま取り込んで作中の謎解きに奉仕させるのは「霧舎学園」ならではの趣向で、毎回見抜けずに悔しがってばかりなんですよね。
事件自体はいつもの如く結構陰惨ではあるのですけど、ある人物の気の利いた計らいも手伝って読後感は爽やかです。
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