2011.10/25 [Tue]
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』
![]() | ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫) 三上 延 アスキーメディアワークス 2011-03-25 売り上げランキング : 6152 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
本の中だけではなく、この本が辿ってきた運命にも物語がある……ぼくはその物語ごと手に入れたいんだ
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。
「ビブリア古書堂の事件手帖」第1作。
メディアワークス文庫発のヒット作品。ライトノベル畑の作家さんを一般に売り込もうという目的なのかは知りませんが、大人向けライトノベルをコンセプトに掲げるメディアワークス文庫はいまいちターゲットがわかり難いというか。レーベルファンには悪いけれど創設当初、絶対にコケると思っていました。それがここにきて遂に、20万部突破という堂々たる看板作品が現れました。
古書は内容だけでなく、本そのものにも物語がある――古書とその持ち主にまつわる人間模様を紐解く物語と聞けば、電子書籍よりも紙の本を愛する本好きならばまず間違いなく食指が動いてしまうハズです。勿論、自室の本棚を1時間眺めていても飽きないような私もそんなひとりです。
そうはいっても私自身は古書はあまり好きではありません。というのも新刊書店で買ってきたわけではない古本は“誰かの物語”を持っているが故に、何をどうやっても永遠に自分のモノにし切れない気がするからです。外様気分が拭えないとでもいうのでしょうか。まあ、そういった殆ど偏執的なまでの本への拘りは、まず他人には理解されないのですが。
本作で特筆すべきはなんといってもミステリとしての質の高さ。この手の小説によく見られる軽めのなんちゃってミステリーかと思ったら大間違い。バリバリの本格ミステリです。
第二話「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」で“すれ違った女子高生がバス亭の方へ向かった”と何気なく語られたたったそれだけの伝聞情報から重要な証言者を導き出すロジック。第三話「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」のラスト、奥さんの心情をそれまでに交わされたやりとりから推察してみせる手際。おまけに名探偵が名探偵であることの残酷さまで描かれています。いやぁ、そもそも栞子さんが大輔を雇ったこと自体、最終話の事件を見越しての布石だったんじゃないかと最後まで冷や冷やしました。可憐で可愛らしい栞子さんにそこまでやられたら、さすがに立ち直れなかった……。
三上さんがもともとミステリ作家ではないせいか、売れている割にはミステリとしての評価をあまり聞きませんが、このミスどころか本ミス20位圏内にランクインしてきてもおかしくないほどの出来の良さです。
スポンサーサイト
NoTitle
ただ、ちょっと気になったのは連載されていた作品でもないのに
話のたびに人などの説明が入っていたのが冗長に感じました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。